2021 Fiscal Year Research-status Report
粘土層間のフレキシブルさを利用したクロミズム材料の開発
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19K05403
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 康孝 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30634753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守友 博紀 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 講師 (30803548)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノシート / 物理化学 / 機能物質科学 / 有機分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
テトラフェニルエチレン(以下TPE)系化合物は、分子の置かれた環境によって発光挙動が大きく変化する。その特性から、化学センサーや有機発光デバイスなどに利用されている。本研究では、無機層状化合物の一つでありカチオン性の化合物を高密度に層間に取り込むことが出来る粘土鉱物に着目し、TPE系化合物を組み合わせた機能材料の開発を令和3年度は試みた。 粘土鉱物として市販のサポナイト(以下SSA)を用いた。層間に挿入する化合物として、発光帯を可視光領域に持つためにドナー性置換基であるジメチルアミノ基を有する化合物(以下DATPE)を合成して用いた。SSA-DATPEハイブリッドを作製し、その導入量による材料の光学特性の変化を観察した。 DATPEハイブリッドは、粘土の陽イオン交換容量に対して10%DATPEを導入したハイブリッドにおいては600 nmにピークを持つ大きな発光帯を示した。粘土層間の導入量を減少させると、470 nm付近にピークを持つ新たな発光帯が生じた。これは粘土層間において、10%の導入量のハイブリッドでは化合物同士の分子間距離が近く、粘土層間でエキシマ―を形成しているが、CECが低くなるにつれて化合物同士の分子間距離が広がり、層間でモノマーの状態に変化するためであることが示唆される。さらに、DATPEの導入量が0.1%のハイブリッドにおいて、モノマーとエキシマ―が混在する系を構築することができ、可視光領域全体に発光帯を持つ白色発光を示す材料の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに刺激に応じてソフトに応答し、分子間相互作用が精緻に変化する材料の構築に取り組んできた。これまでの研究では、水分子の出入りに伴って、ナノシートの層間空間に存在するアミノ基を有する有機分子が層間空間内でプロトンの受け渡しを行うことを発見した。この層間環境と有機分子とのプロトンの受け渡しを利用することで、有機分子の電子状態、すなわち分子の色を水の出入りで可逆的制御可能であることを見出した。また、テトラフェニルエチレンをナノシートの層間空間に、導入量を制御しながら取り込むことで、分子の会合状態が制御可能であることも明らかにした。この会合状態の制御を用いることで、単一の分子のみで、白色発光性の固体材料を得ることができることも見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、粘土鉱物を積極的に研究に利用し、分子の電子的性質をより詳細にコントロールできるようにすることを目指す。粘土鉱物の合成条件の制御を用いた層電荷のコントロール、取り込む有機分子の構造と発現する光機能の相関、有機分子のみならず金属錯体や金属クラスターなど、あまり粘土鉱物の複合化に用いられていなかった化合物の利用、水分子以外の有機溶媒やガス、イオンのなど外部刺激の利用を複合的に組み合わせることで、研究を展開し、新たな材料の創出、より精緻な物質の電子状態のコントロール術の確立など、基礎的な科学技術の発展を目指す。
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Causes of Carryover |
論文投稿料及び開催が延期された学会への参加を計画しており、そのための費用を準備するため。
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Research Products
(7 results)