• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

軌道自由度を有する分子性超伝導体における電子対形成の研究

Research Project

Project/Area Number 19K05405
Research InstitutionEhime University

Principal Investigator

山本 貴  愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (20511017)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2024-03-31
Keywords分子性伝導体 / 分子軌道自由度 / 分子分光 / 高圧
Outline of Annual Research Achievements

分子性物質における超伝導を始めとする伝導性の発現条件を探るため、電子-電子間斥力と電子-格子相互作用(格子歪みによる電子同士の引力)を実験観測量から評価できるのか検討する研究である。本研究では、分子性導体を「A: 分子の二量体化が最も弱い系、B: 弱い二量化を示す系、C: 顕著な二量化を示す系、D: 結合に近い二量化を示す系、E: 単一成分系」のグループに細分して、分光学的手法により斥力と引力にまつわる量を求める。昨年度までの移動制限による影響と、装置トラブルと療養を行ったため、研究期間の延長を決断した。そのため、今年度はC・Dを優先的に研究した。
Dに属するMe4Q[Pt(dmit)2]2(Q = N, P, Sb)の二量体における軌道準位を、近赤外分光により確定させたので論文発表した。高温の金属相ではHOMO由来の反結合性軌道が半充填バンドを形成する。中心金属がPdの場合とは違い、金属-半導体転移において軌道準位の入れ替わりが起こることで、価電子は斥力よりも引力の影響を受けるようになる。低温の半導体相では、LUMO由来の結合性軌道に価電子が収容され、-2価の二量体が生成することが判明した。
圧力中の分子性伝導体において斥力と引力を評価できるように、ダイヤモンドアンビルと液体媒体を利用した偏光赤外スペクトルを測定する方法の開発を行い、学会発表した。赤外光を透過するtype-IIaダイヤモンドだけでなく、ナノ多結晶ダイヤモンドを使っても一部の分子内振動であれば観測可能である。
また、Cに属するκ-型BEDT-TTF塩や、Dに属する X[Pd(dmit)2]2(X=1価の陽イオン)において、斥力と引力を評価できるように、実験データの解析法を探った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ヘリウム供給装置の修理、本申請者の療養、および、これまでの移動制限による影響のため、A・Bの研究を停止してC・Dの研究を中心に行った。
Dに属する物質では、フェルミエネルギー近傍に複数の軌道が存在するので、伝導性や磁性に影響を与える軌道を先に判定してから、引力や斥力を評価する必要がある。2021年度に発表したMe4Sb[Pt(dmit)2]2の振動分光による成果に続き、近赤外分光を使った評価法を論文発表した。金属-絶縁体転移において、軌道準位の入れ替わりに伴う不均化反応が起こる。金属相ではHOMO-HOMO間で斥力の影響がみられるが、半導体相では-1価のLUMO同士に引力が働くことで-2価の二量体が生成することを見出した。
以前に測定したEtMe3As[Pd(dmit)2]2(Dに属する)の分子内振動スペクトルを数値解析した。斥力により反強磁性秩序を形成する分子集団に混ざって、引力により-2価の四量体も形成されることが判明した。
Eに属するPd(dddt)2 は、Dirac電子系として期待されているものの、本研究に適した試料合成が難しかった。そこで、2022年度は合成が比較的容易な類縁体Ni(dddt)2に着目し、基準振動解析を行い、ラマンスペクトルと圧力中の赤外スペクトルを測定した。C=C伸縮振動の周波数が圧力に依存した。二種類の軌道準位が近接する様相を追跡できることが期待できる。
2021年度に、液体媒体とダイヤモンドアンビルセルを利用して、圧力中の赤外反射スペクトルを無偏光で測定できるようにした。2022年度では、偏光スペクトルを測定できるのか検討した。Cに属するκ-型(BEDT-TTF)2Cu(SCN)2を用いて実験したところ、斥力と引力に関する議論が可能であることを見出したので、学会発表した。

Strategy for Future Research Activity

2021年度までの出張制限による影響と、2022年度に起こったヘリウム供給装置の故障と修理、および、本申請者の療養のため、一部の計画で進行が遅れた。2022年度の途中から研究期間の延長を決定し、2023年度には以下の研究を行う予定である。
Cに属するκ-型BEDT-TTF塩でも、EtMe3As[Pd(dmit)2]2で行ったように分子内振動のスペクトルを数値解析できるのか検討する。κ-型(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Iおよび、反強磁性体や超伝導体に適用する。解析結果から、斥力が働く分子からなる(磁気秩序を形成する)集団と、引力が働く分子からなる(スピンギャップを形成する)集団が、共存できるのか検討する。
Eに属するPd(dddt)2 に関して、本研究に適した試料合成法を検討する。合成できた場合は、圧力中の赤外スペクトル、および、ラマンスペクトルを測定する。周波数が圧力に依存するC=C伸縮振動を見出し、Dirac電子系の検証が可能なのか検討する。
2022年度は、AとBに属する物質のうち、金属的伝導を示す試料を対象に一軸圧縮を行う予定であったが、ヘリウム供給装置の修理のためできなかった。一軸圧縮の研究を発展的内容になるように組み直して、独立した新規課題として別途行うことにした。本課題においては、一軸圧縮が未適用であるAとBに属する物質における分子内振動を観測し、斥力と引力に相当するC=C伸縮振動の周波数を求める。得られた周波数から、既に一軸圧縮により超伝導が促進された物質と共通性があるのか探る。
以上の実験から、電子-電子間に働く引力と斥力にまつわる観測量を、AからEに至る物質で得ることができるので、超伝導など伝導性が発現する条件を俯瞰的にまとめる予定である。

Causes of Carryover

2021年度では新型コロナウイルスにより、外部機関で実験する機会を失った。2022年度は療養する必要があったため、外部機関での実験を十分に行うことができなかった。また、物性測定装置(PPMS)に液体ヘリウムを供給する装置が故障し、修理を完了するまでに時間を要したため、電気抵抗測定を中断した。費用は、Pd含有試薬等の購入や、試料の分析費用、および、学会発表と論文発表のための経費に充当する予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2023 2022

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Orbital Degree of Freedom in Conducting Platinum-Dithiolene Complex Salts2023

    • Author(s)
      Yamamoto Takashi、Hiraga Daiki、Arashi Ikumi、Takasugi Koh、Naito Toshio、Ishikawa Tadahiko、Okimoto Yoichi、Koshihara Shin-ya、Nomura Mitsushiro、Kato Reizo
    • Journal Title

      Journal of the Physical Society of Japan

      Volume: 92 Pages: 024701/1-10

    • DOI

      10.7566/JPSJ.92.024701

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] NPDおよびType-IIaダイヤと液体媒体で加圧した分子結晶の赤外偏光反射スペクトル2022

    • Author(s)
      山本貴*、立花侑果、内藤俊雄、新名亨、入舩撤男
    • Organizer
      第63回高圧討論会
  • [Presentation] 伝導性分子結晶における軌道自由度2022

    • Author(s)
      山本貴*
    • Organizer
      日本化学会中国四国支部大会
    • Invited
  • [Presentation] Unidirectional Tetramer Formed in Molecule-Based Superconductor2022

    • Author(s)
      Takashi Yamamoto,* Yuichi Okii, Toshio Naito, Kensuke Konishi, Mikio Uruichi, Hiroki Akutsu, Yasuhiro Nakazawa
    • Organizer
      The 14th International Symposium on Crystalline Organic Metals, Superconductors and Magnets (ISCOM2022)
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi