2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K05416
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堂本 悠也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50790995)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己集合 / ナノ空間 / 空孔 / 配位結合 / 共結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有限個のナノサイズ3次元空孔からなる集合体の構造一義的構築と応用を目指す。 有機配位子(L)と金属イオン(M)のなす金属配位を駆動力とした自己集合を制御することで、複数のナノ空孔を集積したオリゴマーを合成することを概念設計の出発点とし、これまで広く研究されているホストーゲスト間の相互作用に基づいたしくみからさらに一歩踏み込んだ、異種3次元空孔間における“ホストーホスト”コミュニケーションの発現機構を開発することを目標とした。今年度は、はじめにナノ空孔のモノマーを得るため独自に設計・合成したプロペラ型三座配位子と、種々の金属イオンを検討した。とりわけ、構造予測が容易と考えた直線2配位をとる1価金属イオン(M : Ag, Cu)との錯形成条件について種々検討したところ、予想された単純なM3L2型空孔錯体ではなく、2つのM3L2空孔がインターロックした分子が得られることがわかった。そこで、引き続き対アニオンや溶媒条件について種々検討を行った結果、直径が4 nm前後に及ぶ極めて複雑な構造をもつ空孔錯体が構築されることが、溶液NMRおよびX線結晶構造解析により明らかとなった。一連の構造について精査したところ、プロペラ型配位子が2つ重なったM3L2型の構造が共通のサブユニットとして得られ、これがオリゴマー化することで(M3L2)n多面体型(n=2,4,6)の各種構造が構築されたことを解明するに至った。加えて、構造解析のための単結晶作製の試みにおいて、液―液拡散法による結晶化の結果、上記の2量体空孔分子が、同じ金属と配位子から形成された細孔性シート状の無限錯体との構造相補的な共結晶化を起こすことを見出した。これは当初の目標とした、複数種類のホスト間におけるコミュニケーションのひとつの形として極めて有望な現象と期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の設計とは異なる実験結果が得られているものの、(M3L2)n型多量化錯体の構築、および空孔分子と細孔性錯体の構造相補的共結晶化のいずれも目標とした異種空孔間におけるホスト-ホストコミュニケーションの発現という観点から大変有望な技術基盤を与えるものであり、計画を凌駕する成果に繋がることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた予想外の発見に基づき実験系を再構成し、引き続きディスクリートなナノ中空分子の異種混合系の構築を検討するとともに、これまでに得られた多量化空孔分子の溶液中における動的変換や、共結晶系におけるホスト-ゲスト化学について詳細に調べることで、ホスト間コミュニケーションの機能発現を実現するための分子システムを確立する。
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