2020 Fiscal Year Research-status Report
多様な環状構造の可逆変換-トランスフォーマブルマクロサイクルの創成
Project/Area Number |
19K05417
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中薗 和子 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30467021)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロサイクル / トポロジー / カテナン / ロタキサン / 超分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、末端を持たないマクロサイクル特有の物性や化学特性発現を内在する変換可能な材料の創製を目的とし、機械的結合を骨格に有するマクロサイクルを鍵構造として用いることにより、可逆的な構造変換が可能なマクロサイクルの開発と物質・機能の評価を目標として研究を推進した。高分子中に構造明確に機械的結合を構築し、かつ機械的結合を特定の位置に固定する合成法の開発が鍵であったが、前年度までにクラウンエーテルの内孔に高分子中の導入した水素結合性官能基サイトが選択的に包接されることを利用して、高分子のトポロジー変換が可能かつ高収率で合成可能な高分子Handcuff[2]ロタキサンの合成を達成した。本年度は、新しいHandcuff[2]ロタキサンの合成法として論文化するために、前年度に開発した二環性クラウンエーテル分子と軸分子から構成されるHandcuff[2]ロタキサンの構造決定のために必要な化合物データ等の詳細なデータの収集を行い、論文化の準備を中心に進めた。 また、これまで酸・塩基により高分子中のクラウンエーテルの局在位置を制御していたが、酸・塩基以外の刺激による応答機構を導入してより複雑なトポロジーを有するマクロサイクルや高分子量のマクロサイクル合成に展開するため、Handcuff[2]ロタキサンに動的共有結合化学を導入するための合成ルートの探索を行った。ジスルフィド結合で架橋した二環性クラウンエーテルを用いて低分子モデルのHandcuff[2]ロタキサンを設計し、合成経路の探索を進め、各合成段階の反応条件の最適化を達成した。また、高分子量体の合成に向けた原料化合物の合成を中心に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文投稿を予定していたHandcuff[2]ロタキサンの合成については、年度末までかけて論文化に必要な化合物データの収集は完了した。次年度中には投稿可能な状況である。一方、動的共有結合を導入したモデルの合成および反応条件の最適化そして構造評価が今年度の重点課題であったが、感染症予防のために実験時間の制限が大きかったため、合成実験の進捗は大幅に遅れている。しかし、低分子モデルの検討と並行して原料合成を本年度中に進めていたので、次年度はターゲットの高分子合成に着手可能な状況である。すでに合成したマクロサイクルについても物性およびコンポジット材料等への応用を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
Handcuff[2]ロタキサンの合成に関する論文投稿に向けた論文の執筆を進める。実験では①動的共有結合を有するHandcuff[2]ロタキサンの合成と構造制御およびポリマー等への変換について検討を進める。可動な機械的結合を動的共有結合化学によって固定化することで、化学修飾や重合反応に安定な構造に変換し、マクロサイクル含有高分子材料としての物性・機能を評価する。具体的には2つのクラウンエーテルがジスルフィド結合した二環性クラウンエーテルを有するロタキサンHandcuff[2]ロタキサンの動的共有結合挙動をNMRにより精査する。また、②①の分子設計に基づいて高分子軸を導入したHandcuff[2]ロタキサンを合成し、熱物性等バルクでの高分子物性評価を行い、マクロサイクル構造の安定性について評価する。③Handcuff[2]ロタキサンの多量体の合成や集積化により、より高度なマクロサイクル構造を有する高分子の合成と物性評価を行う。 本年度は、実験時間の制約が大きかったために、データの収集および解析を丁寧に進め、実験に関しても既知化合物である原料の合成を中心に進めたため、試薬やガラス器具等の消耗品は現有のもので進めることができた。今後は、新規高分子の合成および物性評価に向けたスケールアップ合成も必要である。また、実験協力者についても増員が見込めるため、本年度の合成実験の遅れを取り戻すよう進める。また、高分子上をクラウンエーテルが移動するプロセスについてNMRによる速度論解析およびシミュレーションに着手し、高分子の運動とクラウンエーテルの移動のタイムスケールやエネルギーの詳細を明らかにし、マクロサイクル構造生成のメカニズムについて考察する。
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Causes of Carryover |
初年度から研究代表者が1名で実験を行っており、これまでのところ研究室で保有している試薬および溶媒を利用して合成が可能であった。そのため情報収集のための学会参加費のみの支出であった。また2年目の今年度はCOVID-19感染拡大の影響により年度始めの3ヶ月間の実験停止およびその後も出校頻度・時間の抑制と実験室移転があったため、本来ならば新規化合物の合成検討やスケールアップ合成実験を進めたいところであったが、前述の実験上の制約のため、既知化合物の原料合成やすでに合成していたサンプルの論文化のための化合物データの収集および解析に多くの時間を使ったため、次年度使用額が生じた。これについては、今年度2回目の緊急事態宣言解除以降、大幅な実験時間制約の緩和が認められており、合成実験の協力者が得られるため、次年度は十分に遅れを取り戻すべく実験を進められる状況になることが見込める。また、論文投稿も予定しており、次年度使用学について論文投稿のための費用およびそれら成果を学会等で発表するための参加費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)