2019 Fiscal Year Research-status Report
光による結合組み換えを利用したキノイド化合物の光反応に関する研究
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19K05421
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
波多野 さや佳 広島大学, 理学研究科, 講師 (30648689)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光有機反応 / ラジカル種 / キノイド構造 / フェノキノン誘導体 / スピン状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
光有機反応ではラジカル機構で進行する反応が多く、その反応機構の解明や学術的な面からも有機ラジカルに関する研究が進展している。ラジカル種は反応性が高いため、新たな有機ラジカル分子を創製し磁気的相互作用および反応性を解明することで、これまでの概念を覆す新たな反応やそれに伴う結合形成、分子骨格を見出す可能性があり、基礎研究として非常に重要である。しかしその一方で、反応性が高いために有機ラジカル種は扱いが困難なことが多く、研究報告例が少ないのが現状である。本研究では、光照射による『結合組み換え』で構造が変化するフォトクロミック分子をリンカー骨格とした新規フェノキノン誘導体を用い、光の作用によってキノイド構造とビラジカル性の寄与をコントロール可能な新たな分子の創製および光反応を解明し、扱いが困難な有機ラジカル分野の新たな研究戦略指針を開拓することを目的とする。 本研究では、光照射による結合組み換えで構造が変化するノルボルナジエン誘導体をフォトクロミック分子としてリンカー骨格に用いた新規フェノキノン誘導体の光物性の解明を試みる。 令和元年度は、『光照射前後のスピン状態および反応機構の解明』を最優先事項として、研究を推進させた。具体的には、電子スピン共鳴測定、時間分解吸収スペクトル測定、レーザーフラッシュフォトリシス測定等を、様々な条件の下で行った。これらの結果から、目的化合物である『フォトクロミック分子をリンカー骨格とした新規フェノキノン誘導体への光照射によって生成する光誘起ラジカル種』は非常に短寿命種であり、測定条件などのさらに詳細な検討が必要であることが示唆された。しかし、今回の結果から、大まかではあるが、目的化合物である新規フェノキノン誘導体の光反応挙動を捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子スピン共鳴測定、時間分解吸収スペクトル測定、レーザーフラッシュフォトリシス測定等をさまざまな条件で行うことで、目的化合物であるフォトクロミック分子をリンカー骨格とした新規フェノキノン誘導体の大まかな光反応挙動を把握することができ、本年度の最優先目的である『光反応機構の解明』に大きくつながる結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、前年度の研究結果から得られた、目的化合物であるフォトクロミック分子をリンカー骨格とした新規フェノキノン誘導体の大まかな光反応をさらに精査し、『光反応機構の解明』を推進させる。各種測定に関しては、さらに詳細な条件検討を行い、光反応特性を追究していく必要がある。光照射によって生成光誘起ラジカル種は非常に短寿命種であるため、この点に関してはナノ秒オーダーよりもさらに短いピコ秒、フェムト秒オーダーのレーザーを用いた時間分解分光測定を行うことも検討していく。量子化学計算も引き続き行い、目的化合物である新規フェノキノン誘導体の光反応機構を解明していく。さらに、『光照射前後のスピン状態』についても、ESR測定の条件検討を行いながら、場合によっては液体ヘリウムを用いた低温測定を行って明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
測定に必要と思われた測定溶媒や消耗品器具・物品が、見積もった金額よりも少なく済んだため、使用額が年度繰り越しとなった。 令和2年度も主に、測定を行う際に必要となる物品の購入を検討している。
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