2021 Fiscal Year Research-status Report
Syntheses of carbone-carbene binuclear gold (I) complexes and their development of luminescence property
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19K05424
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
藤井 孝宜 日本大学, 生産工学部, 教授 (00283060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カルボン / カルベン / 金錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,単離が困難であった[Au2(BiSC)2)(IiPr)2]2+(BiSC = C(Ph2SNMe)2, IiPr = N,N-ジイソプロピルイミダゾール-2-イリデン)錯体を再検証するため,BiSCとIiPrで支持された金(I)錯体(IiPrAuCl)を反応させることで,カルボン-NHC金(I)錯体[Au(BiSC)(IiPr)]TfO (1a)の合成と構造解析を行い,更に1aと過剰量のIiPrAuClとの反応も行い,その反応性についても調査した。AgTfO存在下, BiSCと1当量のIiPrAuClを反応させることで[Au(BiSC)(IiPr)]TfOを78%の収率で得た。また, 単結晶X線構造解析によって分子構造を明らかにしたところ, [Au(BiSC)(IiPr)]TfOのNHC-Au距離は同様の構造をもつ[Au(BiSC)(IMe)]TfOと比較して短くなった。[Au(BiSC)(IiPr)]TfOに1当量のIiPrAuCl反応させたところ, カルボン炭素のジェミナル配位は起こらず,硫化ジフェニルとNHCの不均化生成物を含む混合物が得られた。また, 5当量のIiPrAuClを反応させた場合は, NMR測定の結果からカルボンの中心炭素を反応系内に放出し, IiPrを母体とする発光性錯体が得られたことが確認されたが, 結晶性が悪く単離ができなかった。そこで結晶性を高めるために, SbF6をカウンターアニオンとする[Au(BiSC)(IiPr)]SbF6 (1b) を合成し, 5当量のIiPrAuClと反応させたが同様に単離には至らなかった。以上のことから, BiSCとIiPrを配位子とするカルボン―NHC金(I)錯体は, 過剰量のIiPrAuClと反応させた場合はカルボン炭素を系内に放出しIiPrを母体とする発光性錯体を形成することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
[Au(BiSC)(IiPr)]+のTfO体やSbF6体を単離し,単結晶構造解析により,その分子構造を明らかにした。また,[Au(BiSC)(IMe)]TfOと比較したところ,カルボン-Au結合は,NHC配位子のTEP値に依存することを明らかにした。しかし,当初予定していた2核金(I)錯体の合成・単離には至らずに,分解反応が進行するとともに,IiPr-AuユニットからなるAu(I)クラスターが生成し,そのクラスターに発光挙動が確認出来た。これらの結果は,予期した結果ではなかったが, カルボン炭素を由来とする多核金属クラスターへの展開も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
BiSCの2核金(I)錯体は,金(I)クラスターを生成することが分かった。また,環状カルボンを配位子とする2核金(I)錯体においては,6員環の合成を試みているが,5員環,7員環の配位子を検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度は,新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴い,2020年度ほどではないが,大学への入講制限や感染防止対策等があり,本研究課題を遂行するための研究時間が十分ではなかった。次年度の使用額は,多核金(I)錯体の合成に関わる物品費に使用する。
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