2019 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis and development of nano-carbon compounds and materials
Project/Area Number |
19K05428
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
長洞 記嘉 福岡大学, 理学部, 助教 (30402928)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | グラフェン / 酸素 / 硫黄 / セレン / 環化反応 / 電子構造 / 固体構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
単層グラフェンが剥離法で単離されて以降、「薄く」・「軽く」・「高強度」の炭素薄膜材料に高い関心が集まっている。本研究課題では従来法とは異なる有機合成化学の手法を使いグラフェン類の合成法を開発することを目的としている。容易に入手できる反応原料を用い、簡便な合成経路を経ることで、それらを大量に供給する方法となることが期待できる。つまり、基礎化学的に重要な課題であるだけでなくく、化学産業へ与える影響も大きいと予想される。 2019年度は酸素、硫黄およびセレン原子を含むナノグラフェン分子の合成法開発を行った。特に近接位にホルミル基を導入した合成前駆体にブレンステッド酸もしくはルイス酸を作用させることで定量的に酸素や硫黄原子を環内に含むグラフェン型分子の合成に成功した。この合成法は更に高周期元素のセレンを含む誘導体にも適応可能であることがわかり、種々の元素を環内に導入するとても効率的な合成法であることが明らかになった。この手法はこれまで有用な合成法が未開発であったセレン原子を含むカチオン性芳香族類を得るための革新的な合成法となることが強く期待される。 合成した物質の電子構造を核磁気共鳴法、紫外可視吸収・発光分光法で、固体構造を結晶構造解析で解明した。特に多核核磁気共鳴分光法では、芳香族性を示す有力な結果が得られ、合成したカチオン分子は十分な芳香族性を有していることが解明された。さらに、既存の炭化水素誘導体とは基礎的性質が大きく異なることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は酸素、硫黄およびセレン原子を含むナノグラフェン分子の合成法開発を行った。特に近接位にホルミル基を導入した合成前駆体にブレンステッド酸もしくはルイス酸を作用させることで定量的に酸素や硫黄原子を環内に含むグラフェン型分子の合成に成功した。この合成法はこれまで有用な合成法が未開発であった硫黄もしくはセレン原子を含むカチオン性芳香族化合物の革新的な合成法になることが期待される。さらに、この方法は分子構造に依存することなくこれまでに実施したすべての誘導体で進行することが明らかになり、今後の合成法進展に大きく寄与することが期待できる。 さらに、分子内に酸素、硫黄およびセレン原子を含むグラフェン型分子の電子構造を解明し、既存の炭化水素類とは性質が異なることがわかり、今後の物質の特性を活かした応用展開が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度に開発した新規合成法により分子内に酸素、硫黄およびセレン原子を含むグラフェン型分子の合成に成功した。それらの基礎的性質が明らかになった。そこで今後は、性質の差異を起こす要因を解明する。特に理論的考察が必要なことが多くなるため、分子軌道計算を併せて行い、構造と物性の相関に関する考察を深化させる。また、分子構造を解明するために赤外吸収およびラマン分光法、紫外可視吸収および電気化学測定を行い、X線結晶構造解析を用いて結晶構造を明らかにする。 さらに、グラフェン類縁体を用いた電界効果型トランジスタおよび有機ELデバイス作製を探索するため、典型元素を含むグラフェン型分子の薄膜特性を評価する。真空蒸着もしくはスピンコート法で薄膜を作製し、その特性を明らかにする。
|
Research Products
(5 results)