2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Low-bandgap Nanocarbon Materials on the Basis of the Development of Highly Efficient Coupling Reactions of Aromatic Rings
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19K05432
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊東 俊司 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10213042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環状ポリフェニレン化合物 / 湾曲ナノグラフェン / CNTセグメント / ボトムアップ合成 / 低バンドギャップナノカーボン材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、(1)「高効率な還元的カップリング反応の開拓」と「温和な環状脱水素反応」との効果的な組み合わせにより、完全な縮環構造よりなる「有意なベルト幅を持ったCNTセグメント様のπ共役系空間の創成」を成し遂げようとするものである。(2)また、これらの反応を応用展開して、5員環や7員環などの奇数員環の導入で湾曲ナノグラフェンを構築、それらを連結、環化することで連結部位での歪が解消されたフープ状構造の形成を達成していく。(3)さらに、ヘリセンのように湾曲させたナノグラフェンの高効率な構築とその曲面構造を利用したフープ状構造の構築の3つのアプローチに基づき、低バンドギャップが期待されるナノカーボン材料の構築を成し遂げようとするものである。さらに、酸化還元活性な電子供与能や電子求引能を持った芳香環などの導入を合わせて行うことで、材料科学分野において革新的な光・電子応答機能を有する芳香環連結分子(πマテリアル)の創成を目指すものである。 本研究課題の初年度においては、材料科学分野において革新的な光・電子応答機能を有する芳香環連結分子(πマテリアル)創成の課題解決に向け、これら3つの側面から課題の解決を目指した。その結果、還元的カップリング反応を用いた立体的に大きな制約を持ったフープ状骨格の形成に、鍵となるハロゲン原子を結合部位にもつ前駆体の合成に至った。また、ナフタレン環が導入されたポリフェニレン化合物の温和な条件下における環状脱水素反応の検討により、7員環の形成反応の進行が認められた。さらに、鍵となるハロゲン原子の結合したヘリセン構造の構築に成功した。また、多彩な光・電子応答機能を有するアズレン誘導体の導入を可能とするヘテロ芳香環を配向基とするアズレン環の高効率な1,3位選択的パラジウム触媒C-Hアリール化反応の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初めに、還元的カップリング反応を用いた立体的に大きな制約を持ったフープ状骨格の形成においては、極めて良好な骨格形成反応が認められているヘキサベンゾコロネン骨格を温和な環状脱水素反応で形成、形成したヘキサベンゾコロネン骨格を還元的にそれぞれ2本の単結合鎖で連結することにより有意なベルト幅を持ったCNTセグメントの構築の検討を進めた。これまでに、鍵となる結合生成に向けたハロゲン原子を結合部位にもつ前駆体の合成に至っており、今後の目的の環状化合物の合成への足がかりが得られた。 第二の湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用した有意なベルト幅を持ったCNTセグメント様のπ共役系空間の構築の検討については、立体的にかさ高い芳香環置換基であるメシチル基を可溶化基として、分子内に7員環が形成されることで大きく湾曲する湾曲ナノグラフェンの生成の検討を進めた。これまでに、2つのナフタレン環が導入されたポリフェニレン化合物の温和な条件下における環状脱水素反応の検討により、7員環の形成反応の進行が認められた。 第三のヘリセンのような湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用したフープ状構造の形成については、鍵となるハロゲン原子の結合したヘリセン構造の構築に成功しており、今後の目的の環状化合物の合成への足がかりが得られた。本研究の開始以降、π共役系に表裏のないメビウス型のπ共役系空間として、ヘリセン構造を持ったπ共役系空間に注目が集まっている。 さらに、これら3つのアプローチとともに、形成されたCNTセグメントや湾曲ナノグラフェン等へ酸化還元活性な電子供与能や電子求引能を持った芳香環などを導入する目的に、多彩な光・電子応答機能を有するアズレン誘導体の導入を可能とする高効率なヘテロ芳香環を配向基とするアズレン環の1,3位選択的パラジウム触媒C-Hアリール化反応の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
初めに、還元的カップリング反応と温和な環状脱水素反応の組み合わせによる骨格形成反応においては、形成する反応点や反応を行う順序など、多様な分子設計の可能性を併せ持つ。二年次以降においては、これまでに合成に成功したハロゲン原子を結合部位にもつ鍵となる前駆体をもとにヘキサベンゾコロネン骨格部分をそれぞれ2本ずつの単結合鎖で連結したCNTセグメントの構築の検討を進めていく。また、結合様式のバリエーションを含め、多様な観点から、課題の解決を試みて行く。 第二の湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用した有意なベルト幅を持ったCNTセグメント様のπ共役系空間の構築の検討については、温和な条件下において、7員環の形成反応の進行が認められたことから、湾曲ナノグラフェンの構築の検討をさらに追求するとともに、湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用した有意なベルト幅を持った完全な縮環構造よりなるCNTセグメント様のπ共役系空間の創成に向けた試みを進める。 第三のヘリセンのような湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用したフープ状構造の形成については、鍵となるハロゲン原子の結合したヘリセン構造の構築に成功しており、今後、目的の環状化合物の合成へ向けた検討を進めていく。このような骨格形成反応においては、形成する反応点や反応を行う順序など、多様な分子設計の可能性を併せ持つ。多様な観点からの検討を進めていきたい。 さらに、革新的な低バンドギャップナノカーボン材料の創出を目指して、これまでに明らかになった多彩な光・電子応答機能を有するアズレン誘導体の導入を可能とする高効率なヘテロ芳香環を配向基とするアズレン環の1,3位選択的パラジウム触媒C-Hアリール化反応の開発をさらに進めていきたい。
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Causes of Carryover |
合成研究を主体とする本研究課題の推進には、研究期間を通して消費される実験用器具類ならびに合成用試薬に関する物品は必要不可欠なものである。特に合成用試薬については、研究の進捗状況に合わせて効率よく準備していくことが必須である。令和元年度においては、実験用器具類ならびに合成用試薬等で経費を研究の進捗状況に合わせて効果的に執行していった結果、当初見積額から若干の予算を繰り越すことになった。令和2年度においては、本研究課題の初年度の成果を踏まえて、繰越予算を含めて効率よく執行することで効果的に本研究課題の目的の達成に努めたい。
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Research Products
(2 results)