2019 Fiscal Year Research-status Report
非共有結合性相互作用を利用した新規拡張π共役分子の機能化
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19K05433
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石塚 智也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20435522)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポルフィリン / イミン窒素 / 芳香環 / プロトン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、以前に四重縮環ポルフィリン(QFP)の合成を報告し、QFPのHOMO-LUMOギャップは、π共役系の拡張により、縮環前と比べて小さくなることを明らかにしている。本研究では、原料のポルフィリン誘導体のメソ位に配位性のピリジル基を導入して、Pd触媒を用いた縮環反応を行い、芳香族サーキットにイミン窒素原子が含まれたQFP誘導体を合成し、イミン窒素のプロトン化を利用したQFPの酸化還元挙動の制御を目指した。 まず5,10,15,20-テトラピリジルポルフィリンに10等量のN-ブロモスクシンイミドを加え、1,2-ジクロロエタン中で加熱還流することにより、ピロールβ位が4つブロモ化されたテトラブロモ誘導体を得て、X線結晶構造解析により構造を明らかにした。得られたテトラブロモ体のクロロホルム溶液に、メタノールに溶かした酢酸亜鉛を加え、加熱還流することで亜鉛錯体を得た。さらに、このテトラブロモ化亜鉛(II)錯体に対して、Pdクラスターを用いた縮環反応を行い、縮環部位にイミン窒素を有するQFP誘導体と触媒の混合物を得た。得られたQFP誘導体の一般的な有機溶媒に対する溶解度が低かったことから、QFP誘導体をTFAに溶かすと同時に脱メタル化反応を行い、セライトでろ過して触媒を除いた後に、中和することでフリーベースのQFP誘導体を収率42%で単離した。1H NMRとMALDI-TOF-MS測定により、目的のフリーベース体の生成を確認した。重TFA中でプロトンNMRスペクトルを測定したところ、分子の対称性を反映した4本のシグナルが観測された。フリーベースのQFP誘導体をTFAに溶かし、ジクロロメタンで希釈した溶液中で測定した紫外可視吸収スペクトルでは、内部イミン窒素ではなく、外周部に導入した窒素原子上に優先的にプロトン化が進行していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、外周部に複数の縮環構造を有する拡張π共役系分子を合成し、得られたπ共役系分子が、非共有結合性相互作用によって形成した自己集積化構造を利用して、光・電子機能性の発現を目指している。 研究初年度に当たる今年度は、芳香族サーキットが通る外周部にイミン窒素を有するπ共役系の拡張したポルフィリンの合成に成功した。またプロトン化は、ポルフィリン内部ピロール窒素ではなく、外周のイミン窒素からプロトン化されることが示された。今後は、これを利用した水素結合による縮環ポルフィリンの二次元集積化などに取り組む予定である。 このように本研究は、当初の計画に向けて、目的の化合物の合成に成功するなど、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、合成に成功した外周部にイミン窒素を有する拡張π共役系分子を用い、水素結合などの非共有結合性相互作用や配位結合によって二次元状に集積化した超分子構造を利用して、光・電子機能性の発現を目指す。 特に気-液界面や液-液界面を用いた二次元集積化を達成する計画である。さらに得られた二次元集積体の光捕集機能やプロトン伝導性などの物性を検討する。
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Causes of Carryover |
目的の化合物の合成やキャラクタリゼーションに関して、予想よりも少ない金額で実験を進めることが可能であったが、次年度、行う計画の自己集積体の測定などに費用がかかることが予想されたことから、そちらに使用できるように予算を見直した。
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[Journal Article] Formation of a Ruthenium(V)-Imido Complex and the Reactivity in Substrate Oxidation in Water through the Nitrogen Non-Rebound Mechanism2019
Author(s)
Tomoya Ishizuka, Taichi Kogawa, Misaki Makino, Yoshihito Shiota, Kazuaki Ohara, Hiroaki Kotani, Shunsuke Nozawa, Shin-ichi Adachi, Kentaro Yamaguchi, Kazunari Yoshizawa, Takahiko Kojima
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: 58
Pages: 12815~12824
DOI
Peer Reviewed
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