2019 Fiscal Year Research-status Report
Control of the crytal structure and analyses of the emission mechanism of heterocyclic compounds based on the distorted conformation of their hydrogen-bonding ring
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19K05434
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80313112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重光 保博 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50432969)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 蛍光 / ESIPT / 結晶多形 / 水素結合 / 固体発光 / イミダゾピリジン / 超弾性 / メカノクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
分子集積構造に依存して固体発光特性が変化する系、すなわち「集積構造依存型発光」を示す化合物は、分子の化学構造を変えずに発光が制御できる系として注目される。このような発光を設計するにあたっては、分子の電子状態(分子内の効果)と分子間の相互作用の二つの因子に分割して検討していくことが一般的である。本研究では分子内と分子間の効果を併せ持つ因子として、「制御されたひずみ環構造の導入による立体効果」を提案し、各種測定と高精度の計算化学によるその有用性の確立を第一の目的とする。さらに集積構造依存型発光を示す材料を設計し、外部刺激により発光スイッチングを示す新しい有機固体光機能材料への展開を目指す。本年度は、以下の2項目について主に検討した。 1.ひずみ環構造として分子内水素結合を含む七員環構造を有する化合物が集積構造依存型発光を示すことを見出し、高精度分子軌道計算による機構解析に着手した。本年度は十分な精度かつ低コストな計算条件の探索と絞り込みをおこなった。 2.有機結晶が示すメカノクロミック発光の多くは、機械的刺激によって結晶から異なる固相に相転移して発光が変化する二相系で説明され、可逆制御には二種類の刺激を必要とする。一方、機械的刺激の大きさに応じて発光色が段階的に変化し、除荷により自発的に初期状態に戻る材料は有用性が高いと考えられるが、報告例はごく限られる。 本年度さまざまな検討をおこなう過程で「超弾性発光クロミズム」を示す有機結晶を見出した。すなわち、負荷の大きさに応じて結晶の発光色が黄緑から橙色へ可逆的に制御できることを確認し、X線結晶構造解析から結晶ー結晶相転移に由来することを突き止めた。それまで特殊な合金についてのみ知られていた超弾性現象を利用し、有機結晶の超弾性に基づいて発光特性制御を実現できることを初めて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・高精度分子軌道計算による電子状態シミュレーションの進捗はおおむね当初計画通りに進行している。 ・「超弾性発光クロミズム」というこれまでにない固体発光制御手法につながる現象を見出したことは当初予期していなかった成果であり、各種測定により一定の解析に成功し報告できたことは、この領域への大きな貢献になると考えている。 以上のことから「(1)当初の計画以上に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当初研究計画により、ひずみ構造を有する分子の合成と固体発光特性評価、計算シミュレーションを遂行していく。 新型コロナウィルス感染症の影響により、合成や物性測定等の実験が一定期間の中断を余儀なくされたが、計算シミュレーションやデータ解析などを先行させることにより、研究の推進に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の研究活動への影響を見込み、研究用消耗品の納期を次年度に延期したことが最大の理由である。研究活動の再開が許可され次第、研究計画に従い使用することを予定している。
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