2021 Fiscal Year Research-status Report
スイッチング機能分子ダイオードを指向した電位勾配型シクロファンの創製と物性評価
Project/Area Number |
19K05436
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
迫 克也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90235234)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分子ダイオード / 分子エレクトロニクス / シクロファン / 電位勾配 / 三元系 / スイッチング機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固体エレクトロニクスに代わる単一分子エレクトロニクスを構成する単一分子デバイスとして、スイッチング機能分子ダイオードを指向した新規な電位勾配型シクロファンオリゴマーを創製し、物性評価を行い、新物性のチューニングを探ることが目的である。 剛直なシクロファン構造(B)にスイッチング電位勾配制御部(SG)として1つあるいは2つの3-ピリジル基(3-Py)を組み込み、架橋部にドナー部(D)としてTTFの基本ユニットである1,4-ジチアフルベン(DTF)を三次元的に配置した新規なスイッチング電位勾配制御機能を有するD-B(SG)-Dシクロファン(DTF-3-Py-PCP、DTF-Bis(3-Py)-PCP)の合成に成功した。またシクロファンダイマーの重要な合成中間体であるシクロファン架橋部にtetrathiapentalene-thione(TTP-thione)のような反応性ドナー部(reactive D)を組み込んだD-B(G)-reactive Dシクロファンの合成法が確立できた。 pH変化による電子スペクトルから、ピリジン(SG)を導入したDTF-Py-PCP及びDTF-BisPy-PCPのプロトン化と脱プロトン化は可逆的であった。またDTF-Bis(3-Py)-PCPでは、先ず分子内電荷移動相互作用による吸収帯が400-500nm付近に現れ、更に407nmのピークと400-800nmブロードな吸収帯が段階的に観測されたことから、pHによるDTFドナーへの電子的相互作用の制御が可能であることが示唆された。 今回合成したD-B(SG)-Dシクロファンでは、ピリジンのプロトン化に伴う第一酸化電位の高電位シフトが観測されたことから、pHによってシクロファン架橋部に組み込まれたDTFドナーのレドックス制御が示唆され、pHスイッチングによる電位勾配制御の可能性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スイッチング電位勾配制御部(SG)として [3.3]パラシクロファンのベンゼンに3-ピリジル基(3-Py)を組み込み、ドナー部(D)としてTTFの基本ユニットである1,4-ジチアフルベン(DTF)を三次元的に配置した新規なスイッチング電位勾配制御機能を有するD-B(SG)-Dシクロファン(DTF-3-Py-PCP、DTF-Bis(3-Py)-PCP)を中程度の収率で合成できた。また、シクロファンダイマーの重要な合成中間体であるシクロファン架橋部にtetrathiapentalene-thione(TTP-thione)のような反応性ドナー部(reactive D)を組み込んだD-B(G)-reactive Dシクロファンの合成法が確立できた しかしながら、本研究において解決すべき課題である基本骨格(B)となる剛直構造を有する[3.3]パラシクロファンのベンゼンへのスイッチング電位勾配制御部(SG)を導入したD-B(SG)-Dシクロファン及びD-B(G)-reactive Dシクロファンは合成でき、シクロファンダイマーの合成法を検討したものの、目的とするシクロファンダイマーが合成できなかったことを考慮すると、当初の予定よりもやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
D-B(G)-D-B(SG)-D三元系シクロファンオリゴマーを創製するための基本ユニットとして、重要な合成中間体であるシクロファン架橋部にtetrathiapentalene-thione(TTP-thione)のような反応性ドナー部(reactive D)を組み込んだD-B(G)-reactive Dシクロファンが合成できたので、シクロファンダイマーの合成法を再検討して、目的とするD-B(G)-D-B(SG)-D三元系シクロファンダイマーを合成する。 合成したD-B(SG)-Dシクロファン及びD-B(G)-D-B(SG)-Dシクロファンダイマーの近赤外領域までの波長領域における電解吸収スペクトル測定や電解ESR測定により、電子移動に伴って発生するラジカル等の化学種の安定性や電子的相互作用などの基礎物性を評価したうえで、分子構造と基礎物性の相関を解明する。更にpHなどの外的刺激を変化させた電気化学的測定、吸収スペクトル測定及びESR測定により、スイッチング電位勾配制御部における外的刺激によるスイッチング機能について明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由) 前年度に新型コロナ感染症流行に伴う4か月に及ぶ大学の研究室閉鎖により、当初の計画よりも遅延したため合成に用いる薬品類の購入ができなかったこと、必要な高価な薬品を購入せず安価な原料から合成により供給し節約できたこと、また試薬や溶媒の使用をかなり節約できたこと、研究成果発表の学会がオンライン開催となり旅費の支出がほとんどなかったことから、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 令和4年度の使用計画は、令和3年度の繰り越し分は、若干の合成・測定試薬購入以外は、新型コロナ感染症流行によって変更はあるが、主に外部での測定実験のための旅費に使用する予定である。研究成果発表のための学会に参加する旅費にも使用する予定である。
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