2020 Fiscal Year Research-status Report
光イメージング応用を志向した巨大π共役系短波赤外色素分子の創製
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19K05439
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石田 真敏 九州大学, 工学研究院, 助教 (60706951)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | π共役 / ポルフィリン / 近赤外光 / 光音響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、次世代光イメージング応用を志向した短波赤外領域光(NIR-II:波長1000-1700nm)に応答(吸収・発光・発熱)する色素の創製とイメージング技術の提供を主たる目的としている。生物個体の深部を可視化するプローブ分子の開発において、従来の近赤外(NIR-I:波長~1000nm)領域よりも更に低いエネルギーNIR-II光を活用したイメージング技術が注目を集めている。そこで本研究では、光機能性材料として多用されているポルフィリン系拡張π共役類縁体の光学特性に着目し、固有のフロンティア分子軌道の精密制御を鍵としたNIR-II光励起可能な分子のNIR-II発光および光音響波(PA)発生を実現する色素分子の開発を目指した。 計画2年次までに、6個のピロール環から構成されるヘキサフィリン類縁体を基盤とした色素に対して、亜鉛(II)イオンおよび銅(II)イオンの配位により、波長1000nmを超える光音響信号応答について観測し、極めて高い光安定性を示すことを明らかとした。以上の結果を発展させ、配位金属をパラジウム(II)および白金(II)イオンへと変更し、炭素―金属結合を有するヘキサフィリン錯体色素が極めて低エネルギーなNIR-III(波長1500-1800nm)領域の発光および光音響信号を示す希有な光色素として機能することを見出した。 また、ヘキサフィリン色素骨格とは異なり、N-混乱ポルフィリン系化合物の一部のメゾ位をピロール環で置換したピロリル誘導体に対して、環外部位にてニッケル(II)イオンを鋳型として、縮合二量化した金属錯体が、NIR-II領域においてモル吸光係数の大きな吸収を示し、上記の亜鉛(II)ヘキサフィリン色素と比較して、高いPA信号を示すNIR光機能性分子の開発にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画二年度は、新型コロナウイルスの影響で、全体的な研究計画の遅延が生じたが、重要な成果として、研究目標であるNIR-II光吸収・発光・光音響応答する基盤色素分子を超えた第三近赤外(NIR-III)領域の光色素プラットフォームとなりうる化合物群が創製でき、大きな進展が見られたと考える。また、研究計画に示した構造以外の候補色素として、ポルフィリン二量体系色素が、光安定性の高いNIR-II光音響造影剤として機能することも見出した。 それら色素群を含有する水溶性ポリマー粒子を調製することで、バイオイメージングを想定した水溶液におけるナノ光音響造影剤材料の設計において重要な知見がいくつも得られたと考える。 従って、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、ヘキサフィリン錯体系近赤外色素の成果を基に、色素分子のモル吸光係数の増大が光音響波信号強度に関係しており、より生物個体深部の可視化を目指した強NIR-II光吸収色素の設計を目指す。具体的には、固有の分子軌道の対称性に着目した配置間相互作用の制御とS0-S1遷移の振動子強度(f)の増強を指向し、メゾ位に電子ドナー性エチニル置換されたヘキサフィリン誘導体およびその水溶性誘導体の合成を行う。得られた色素の光物性評価および細胞毒性の検討を行い、in vivoイメージング応用へと展開する。 またπ共役骨格に金属イオンを複合化する色素設計は、ヘキサフィリン系以外のπ共役錯体色素とは異なる色素開発へと展開できる余地があり、並行してそれら色素探索を行う。
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Causes of Carryover |
本研究計画2年度の助成金の使用額の差額が生じた理由として、新型コロナウイルスの影響で計画内容の実験を実施するのが少し遅れたためであり、また国外輸入試薬の入手が滞ったため。
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