2021 Fiscal Year Research-status Report
複数の外部刺激に応答して薬剤を放出すると共に蛍光を発する分解性多環状ホストの開発
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19K05448
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| Research Institution | Fukuoka University |
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Principal Investigator |
林田 修 福岡大学, 理学部, 教授 (20231532)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | シクロファン / ホストゲスト化学 / 刺激応答 / ジスルフィド |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数の外部刺激に応答して分解することで“薬剤を放出する”と同時に自ら“光り出す”薬剤運搬体を開発する。正常細胞と比較してガン細胞はグルタチオン濃度が高く還元的雰囲気にあること、また若干ではあるが pH が酸性に片寄っていることが知られている。そこで、複数の外部刺激としては還元剤の添加や pH 変化に着目した。これらの外部刺激に応じて分解するように、２つの環状ホストを連結した2環状ホストを薬剤運搬体として分子設計した。還元剤のみならず pH 低下にも応答して分解する部位を２環状ホストに組み込むことで、がん細胞に対して高選択的な薬剤の放出を目指した。本年度は昨年に引き続き、複数の外部刺激に応答する分解性２環状ホストの合成を行なった。まずテトラアザシクロファンの４つの窒素原子のうち３つに親水性側鎖を導入して水溶性を付与した３置換型シクロファンを合成した。この単環性ホスト２分子を還元応答的に分解するジスルフィド結合を含むスペーサーで連結した２環状ホスト1を純度良く合成することに成功した。２環状ホスト1が還元応答性を示すことを実証するために、1の水溶液にグルタチオンやジチオトレイトールなどの還元剤を添加して、1の分解挙動をMALDI-TOF MS や NMR スペクトル法から評価した。その結果として、数時間以内に1のジスルフィド結合がジスルフィド-チオール交換反応によってチオール体のシクロファン単量体に分解されることがわかった。還元剤の添加により還元応答的に1は分解することが明らかになったので、pH 応答性に加えて還元応答的なゲスト放出への期待がもたれる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はpHおよび還元応性を示すシクロファン1の合成に成功したが、1のpHおよび還元応答的なゲスト放出について検討を行うまでには至らなかった。本来であれば、蛍光性ゲストである2,6-p-トルイジノナフタレンスルホン酸 (TNS) をゲストとして用い、pH変化に伴う蛍光スペクトルの変化やゲスト捕捉挙動を明らかにした後に、グルタチオンなどの還元剤を添加して、ゲスト放出について評価する予定であった。新型コロナ感染症の影響により、研究活動が制限されて十分に行えなかったことが原因である。
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| Strategy for Future Research Activity |
pHおよび還元応答性を示すシクロファン1のゲスト放出について検討する予定である。具体的には、蛍光性ゲストである2,6-p-トルイジノナフタレンスルホン酸 (TNS) をゲストとして用い、pH変化に伴う蛍光スペクトルの変化やゲスト捕捉挙動を明らかにした後に、グルタチオンなどの還元剤を添加して、ゲスト放出について評価する予定である。pH変化と還元剤添加などの複数の外部刺激に応答する分解性２環状ホストを開発し、pH変化や還元剤などの外部刺激に応じてゲストを放出できるかについて検討する。
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| Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、令和３年度は研究活動が十分に行うことができなかったため。令和３年度に行う予定であった pH および還元応性を示すシクロファン及びその中間体の合成で必要な試薬や溶媒などの消耗品の購入のための支出がほぼ無かった。次年度は、これらシクロファン及びその中間体の合成のために、試薬や溶媒などの消耗品代として支出する予定である。さらに、pHおよび還元応答性を示すシクロファンのゲスト放出について検討するために、蛍光スペクトル法や NMRスペクトル法を用いた各種測定で必要となる消耗品代として支出する予定である。
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