2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a method for C-H bond functionalization iduced by photoirradiation of quinones
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19K05452
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安藤 吉勇 東京工業大学, 理学院, 助教 (40532742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キノン / 光化学反応 / 酸化還元 / 天然物合成 / 不斉合成 / スピロ環 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、1,6-水素移動を経由する光酸化還元反応を活用した天然物合成研究に取り組んだ。 プレウソメリン類はナフトキノンがビススピロアセタール構造を介して二量化した天然物である。これまでに様々な類縁体の単離が報告されており、その酸化度の違いによって、抗菌性や抗腫瘍性など様々な生物活性を示すことが知られている。また、二つのスピロアセタールに由来する特異なビシクロ構造は特徴的であり、格好の標的化合物として、いくつもの全合成研究が報告されてきた。しかし、そのスピロ中心の不斉炭素を立体制御することは難しく、不斉合成は長らく未解決であった。 我々は、開発した1,6-水素移動を経由するキノンの光酸化還元反応が立体特異的に進行すれば、そのスピロ中心の立体制御が可能になると考え、研究を行った。過去に我々は1,5-水素移動を経由するキノンの光反応が立体特異的(立体保持)で進行していることを見出している。一方で、1,6-水素移動を経由する基質において、その立体特異性は未知であった。そこで、光学活性なキノンを合成し光反応を行ったところ、反応は円滑に進行し、しかも、原料の不斉情報が生成物のスピロ中心の不斉炭素へ完璧に転写されることを見出した(立体保持)。これは、当該天然物に含まれるスピロアセタール炭素の立体制御に成功した初めての例である。さらに、ここから天然物へと誘導することにも成功し、プレウソメリンEG3の初の不斉全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、キノンの光酸化還元反応の基質適用範囲を拡大することができている。また、立体特異的な1,6-水素移動経由の光反応を活用して、当初の計画にはなかったプレウソメリンEG3の不斉全合成を達成することもできた。一方で、諸般の事情により未着手の課題も残っている。 総合的に見ると、研究進捗の水準は当初の予定通りと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1,6-水素移動を経由するキノンの光酸化還元反応の立体特異性が想定以上によい結果であったため、この手法を基盤とした合成をさらに発展させる。すなわち、これまで立体選択的な不斉合成が困難であったプレウソメリン類の網羅的な合成を行う。 また、1,5-水素移動を経由する光反応を基盤とした天然物合成にも取り組む。 さらに、キノンの光反応の基質適用性の範囲の拡大に取り組む。
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