2019 Fiscal Year Research-status Report
特異な化学構造と抗腫瘍活性を有する海産マクロライドの全合成研究
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19K05462
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
南雲 紳史 工学院大学, 先進工学部, 教授 (40246765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アレニコライドA / アルコキシ置換反応 / クロスメタセシス / 閉環メタセシス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は主に、海洋放線菌Salinispora Arenicola が産生するアレニコライドAの合成研究を行った。本化合物は結腸ガン細胞に対して中程度の抗腫瘍活性を有する26員環マクロライドである。メトキシ基と水酸基が隣接する構造が4カ所、共役ジエンが3カ所存在する上、側鎖部には三置換エポキシドもあり非常にユニークな構造である。本研究では、4つのセグメントを想定した収束合成を計画しており、2019年度には以下の課題を進めた。 ① 完成してなかったC19位からC26位に相当するセグメントの合成、② クロスメタセシスによるC19-C26セグメントとC27-C36セグメント(側鎖部)の結合、③ 閉環メタセシスによるC19-C36セグメントとC1-C18セグメントの結合 C19-C26セグメントには、メチル基-水酸基-メトキシ基-水酸基からなる4連続不斉中心が存在する。またこれらの先には、クロスメタセシスに供するための末端アルケンを導入する必要がある。今回、こうしたセグメント合成をPd触媒/B(OCH3)3の条件によるエポキシ不飽和エステルの立体特異的アルコキシ置換反応とヨードエポキシドの還元的開裂反応を基軸として完成した。 次に、すでに合成していたC27-C36セグメントと今回合成したC19-C26セグメントに対し、第二世代Grubbs触媒を用いたクロスメタセシス反応を行った。得られたC19-C36セグメントはC1-C18とエステル体とした後、両末端をアルケンにして閉環メタセシスを行った。その結果、約40%の収率でアレニコライドAの完全骨格を有する化合物を合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アプリロニンの合成に関しては、鍵工程としての利用する反応の基礎的な知見を蓄積することと、鍵工程の基質合成の途中段階まで進んだ。一方のアレニコライドAの合成に関しては、4つのセグメントを全て合成し終えただけでなく、メタシス反応を徹底して利用したセグメント間の連結にも成功し、天然物の全炭素骨格を備えた化合物を合成することができた。特に、閉環メタセシスによるC19-C36セグメントとC1-C18セグメントの結合は、もっとも挑戦的な工程であったが、一定の目途が立ったことは大きな前進である。研究テーマの項目間で進捗状況に偏りがあるが、総合的に判断すると概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
既に述べたように、2019年度にアレニコライドAの全炭素骨格を有する26員環ラクトンを合成した。その後、側鎖部のエポキシドを構築するために、アリルアルコールの立体選択的エポキシ化反応を検討しようと考えた。そのために該当する箇所のアルコール保護基(MPM基)を選択的に除去しようと種々検討を行った。しかし、いずれの条件でも分解が進み目的とする化合物を得ることができなかった。おそらく共役ジエンが影響をうけているものと推察され、より温和な条件で除去できる保護基を探す必要がある。そのうえで世界初の全合成を完成させる予定である。 またアプリロニンAの全合成も進める予定である。エポキシ不飽和エステルを室温下でBH3-THF錯体と反応させた後にアルカリと過酸化水素を加えると、4連続不斉中心(メチル基-水酸基-メチル基-水酸基)を有する化合物が一段階かつ良好な収率で生成することを見出している。この反応を利用して、C1-C13セグメントを合成する予定である。この中の7位から10位までに本反応で構築可能な4連続不斉中心が存在する。また、23位から26位および29位から32位にもメチル基―水酸基―メチル基―水酸基の4連続不斉中心が存在するが、それらの相対立体配置の構築には以前我々が見出した反応、すなわち2級エポキシアルコールのシリル化体を基質とする有機銅試薬の位置選択的置換反応を適用できるものと考えている。
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Causes of Carryover |
残額が試薬、器具等に使用するためには少額であったため。
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