2020 Fiscal Year Research-status Report
特異な化学構造と抗腫瘍活性を有する海産マクロライドの全合成研究
Project/Area Number |
19K05462
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
南雲 紳史 工学院大学, 先進工学部, 教授 (40246765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アレニコライド / メタセシス / PMB基の脱保護 / アプリロニン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、海洋放線菌が産生するアレニコライドAとアメフラシが産生するアプリロニン類の合成研究を行った。その側鎖部には三置換エポキシドが存在し、その構築はなるべく後の段階で行う必要がある。また、エポキシドを構築後、分子中に存在する水酸基の保護基を、なるべく穏やかな条件で除去することが求められる。 初年度に閉環メタセシスを鍵工程とした全炭素骨格の構築に成功しており、二年目の昨年は、エポキシドを立体選択的に導入することを目指した。そのためには相当する3置換アルケンに隣接した水酸基の保護基を選択的に除去する必要があった。初年度に合成した基質では、その保護基はp-methoxybenzyl(PMB)基であったので、DDQなどによる脱保護を検討した。その結果、全ての検討において化合物の分解を招いてしまった。この問題を解決するために、保護基をmethylthiomethyl(MTM)基に変えたものを合成しようと考えた。しかし、あらかじめMTM基を導入したC27-C36セグメントと別のユニット(C27-C36セグメント)のクロスメタセシスがPMB基の基質に比べてはるかに低収率であった。次善の策として、PMB基有するC19-36セグメントを再度合成し、C19-36セグメントと連結する前にPMB除去とエポキシ化を検討することにした。ごく最近、DDQでPMB基の除去を行ったところ、良好な収率で所望のアリルアルコールを得ることができた。 アプリロニン類の合成研究に関しては、独自に開発したエポキシ不飽和エステルからの4連続不斉中心構築反応を鍵工程として、C5-C14セグメントを合成した。本反応はエポキシ不飽和エステルをボランで処理することで進行し、60%程度の収率で所望の4連続不斉中心を有する化合物が得られた。これにより本セグメントの短工程合成を実現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、コロナ禍による緊急事態宣言が4月に発令され、その後の5カ月間、学生の入構制限がかかり、十分な研究活動を行えなかった。そうした中でも、本課題を担当する学生たちの奮起によりある程度の前進をみることができた。上述したように、完全な炭素骨格を構築しているが、側鎖部にあるエポキシドを導入するための検討が困難を極めた。そうした中でも、マイナスデータをつぶさに観察することにより、エポキシ化を行える段階まで進んだのは高く評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、コロナ禍の影響で当初の計画より研究が遅れてしまったが、アレニコライドAの全合成をなるべく早期に達成することを目指している。現在、最終段階の検討を博士課程1年の学生が行っている。同時に卒論学生が原料の補給を行っている。アプリロニンの合成に関しては、修士課程1年の学生が行っている。モデル実験などは終えており、実際の合成を効率的に進めるために、セグメント合成を卒論生に担当させる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による長期の学内立ち入り措置により、研究活動が著しく制限された。活動再開が正常化したのは9月以降で、研究に必要となる試薬やガラス器具などは、学内予算などでまかなえた。今年度は、4月から通常の活動状況であり、本研究課題に多くの学生を費やすこともあり、例年以上に研究に関する消耗品が必要となる。また、アプリロニンの合成の鍵工程である4連続不斉中心の一段階構築反応の収率向上のために、フローケミストリーの装置一式を揃えようと考えている。
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