2020 Fiscal Year Research-status Report
高活性超原子価ヨウ素触媒を用いる効率的芳香環C-Hアミノ化法の開発
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19K05466
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
土肥 寿文 立命館大学, 薬学部, 教授 (50423116)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アミノ化 / 酸化 / カップリング / 超原子価化合物 / ヨウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品や機能性材料の骨格として重要な芳香族アミン類の合成戦略として、近年、芳香族化合物とアミン類の酸化的カップリングが注目されている。一方、この反応で用いる遷移金属触媒は5mol%程度必要で、更なる触媒活性の向上が望まれている。本研究では、このような現状を打破する触媒性能向上の新指針を提案・実証することで、優れた有機酸化触媒を開発することを目的とする。 令和2年度は、遷移金属触媒系を凌駕する0.1mol%の触媒使用下での酸化的カップリングの実現と有機酸化触媒の創製を目指して、酸化的C-Hアミノ化における超原子価ヨウ素触媒の設計を完了し、基質適用範囲、生成物選択性、酸化剤の選択肢、溶媒の影響等、遷移金属触媒との比較を意識した総体的な反応系の評価を行った。芳香族アミド類の窒素-芳香環不斉軸におけるアトロプ異性体や、窒素-カルボニル結合の回転障壁に基づく配座異性体の制御を目指した酸化的カップリングは挑戦的なテーマであり、アミドの置換基や芳香環の配向基(DG)等の基質制御法と組み合わせた、位置および立体選択的な酸化的カップリングにも取り組んだ。加えて、高い触媒活性を維持しつつ、適切な不斉環境を持ったキラル超原子価ヨウ素触媒の創製も検討した。芳香環のメタ位選択的な酸化的カップリングについては、基質の光励起による半占軌道(SOMO)との相互作用を利用した反応開発や、光応答性の超原子価ヨウ素触媒を利用した制御を検討した。 本研究の過程において、我々の開発した新規触媒が電気化学的な活性化も可能であることがわかり、脱芳香化を伴うスピロラクタム生成反応において電解触媒として機能することを新たに見出した。本法は、超原子価ヨウ素触媒の活性化に化学酸化剤を必要とせず、酸化剤由来の廃棄物が発生しないため、グリーンケミストリーの観点で優れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ここまでの2年間の研究において、交付申請書に掲げた研究計画を滞りなく実施している。この間の研究の過程において、新しく重要と思われるテーマへと派生する興味深い結果も得られている。研究成果の公表については、予定していたいくつかの国際学会が延期となったものの、論文発表は順調に行っている。研究経費は申請書に掲げた内容に対して実質的に活用できている。次年度に行う実用性の検証実験では、よりスケールの大きい実験を行う必要があるが、そのための経費も十分に確保してある。なお、延期となった学会への参加にかかる予定であった費用については、令和3年度の開催において執行する予定である。本研究に関わる博士課程学生は今年度に順調に博士号を取得できる見込みであり、本研究は若手研究者の育成にも大きく寄与している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、これまでに実施した研究の成果を公表するための追試実験と、学術的な新規性を提案するためのより詳細な実証実験を行う。これまで以上に学術論文や学会、研究会で積極的に成果を公表するとともに、著書や総説としてまとめることによって学術的な評価を確立することを目指す。 酸化的C-Hアミノ化法の実用化に向けたプロセス的な改良として、これまでに開発した超原子価ヨウ素触媒を固相ハイブリッド化し、フロー合成へと応用することで、生産性の向上を目指す。ここでは、マイクロリアクターの流路表面への担持や、3D造形システムを利用した超原子価ヨウ素触媒固定化容器の作成にも取り組む。これらの新規な触媒や反応器を用いて、超原子価ヨウ素カップリングにおける酸化的C-N結合形成と、続くC-C結合形成(我々の酸化的ビアリールカップリングなど)とのフロー連続化や、残存する官能基を利用した多様な反応との集積化を行い、高次の新規化合物を迅速に供給できるか試みる。酸化的カップリングの利用展開として、我々の方法で得られた有用な合成中間体に対し、高度に酸化された芳香環由来天然物や機能性物質の骨格構築を意識した化学的変換を行う。以上の取り組みにより、医薬品やファインケミカルズに有用な芳香族アミン類の新規合成法の確立と有機合成化学的な応用展開を目指す。 メタルフリーな酸化的カップリング法は世界中で注目されている分野であり、活発な研究開発が引き続き行われている。最終年度の本研究では、これまでに得られた知見をもとにした発展的なテーマの開拓も積極的に行いたい。加えて、超原子価ヨウ素触媒を利用した光・電気による酸化反応制御について、持続可能で未来に残る生産システムの構築を産業界と連携して進めたい。
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Causes of Carryover |
長引くコロナ禍の影響で、予定していた学会発表はすべて延期やオンライン開催となっている。そのため、学会参加・成果発表に関わる経費が、当初想定よりも少なくなっている。加えて、3月に納品を予定していた物品の納期が一部遅れ、年度内の会計処理ができずに発生した、未使用額が含まれる。
本未使用額については、当初の目的に対し、次年度に速やかに執行する。成果発表に関する経費については、当初予定の学会発表に加えて、状況に応じて、論文発表の際にオープンアクセスを推進するなどとし、未使用額が発生しないように対応する。
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Research Products
(31 results)