2020 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of Sequence-Controlled Silicones
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19K05468
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 和弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (40512182)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シリコーン / ポリシロキサン / シロキサン / 配列制御 / ワンポット合成 / 合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、研究代表者がこれまでに開発しているワンポット配列制御合成法により数個~十数個のケイ素原子からなる配列制御されたオリゴシロキサンを合成し、これを重合させることでこれまでに誰も成し得ていないシリコーンの配列制御合成法を開発することである。 前年度までの研究により、ワンポット配列制御合成法を用いてスピロシロキサン化合物を合成し、これをトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒存在下にてトリヒドロシランと交互共重合させることにより、そのスピロ構造を保持したまま、規則的にSi-H基を有する大環状ポリシロキサンが得られることを明らかにしている。今年度は、この新規な大環状ポリシロキサンの熱物性を評価した。フェニル基含有率が高いポリシロキサンの方が高いガラス転移温度を示すことが知られているが、この新規な大環状ポリシロキサンは同程度のフェニル基含有率を有する1本鎖状のポリシロキサンに比べて高いガラス転移温度を有することを明らかにした。この高いガラス転移温度の発現には、スピロ構造によりコンフォメーションが抑制されていることが関与しているものと考えている。 また、従来のワンポット配列制御合成法では、モノマーにジヒドロシランを用いているため、ジメチルシリルユニットを導入することが困難であった(ジメチルシランが常温常圧で気体であるため)。そこで、ワンポット合成条件下にてジメチルシランを放出する取り扱いの容易な前駆体を検討した。その結果、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサンがジメチルシラン前駆体として有効であることを見出した。これにより、シリコーン材料の基本となるジメチルシリルユニットをワンポット配列制御合成法にて導入することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通り、アルコキシ基を2つ有するスピロシロキサン化合物を合成し、これをトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒存在下で、トリヒドロシランと交互共重合させることで、規則的にSi-H基を有する大環状スピロポリシロキサンが得られることを明らかにした。加えて、ここで得られた大環状スピロポリシロキサンが通常の1本鎖状ポリシロキサンに比べて高いガラス転移温度を有することも見出しており、ポリシロキサン主鎖へのスピロ構造の導入が、熱物性に寄与することを示唆する結果を得ている。 さらに、従来のワンポット配列制御合成法では合成することが困難であったジメチルシリルユニットを有する配列制御オリゴシロキサンについても、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサンをジメチルシラン前駆体に用いることで、その効率的な合成法を開発することに成功している。この成果により、実際に使用されているシリコーン材料と同じ置換基構成成分を有する配列制御オリゴシロキサンを合成できるようになった。 以上の理由から、本研究課題の進捗状況を「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の通り、両末端にアルコキシ基を有する配列制御オリゴシロキサンについて、これまでに合成が完了しているスピロシロキサン以外のシロキサン化合物についても合成を行い、トリヒドロシランとの交互共重合を検討する。この配列制御オリゴシロキサンの合成には、令和2年度の研究で見出したジメチルシラン前駆体を利用し、実シリコーン材料に近い置換基構成成分の配列制御オリゴシロキサンを合成する。 加えて、これまでの研究で得られている規則的にSi-H基を有する大環状スピロポリシロキサンについては、白金触媒によるオレフィンのヒドロシリル化が進行することを見出しているので、これを応用してジエン類のヒドロシリル化を施すことで硬化が可能と考えている。今後はこのヒドロシリル化やスピロ環の開環重合などを利用した硬化反応を行い、得られた硬化物の物性評価を検討する。 以上により、本研究の目的である、「これまでに誰も成し得ていないシリコーンの配列制御合成法を開発し、モノマー配列構造が物性に及ぼす影響を明らかにする」を達成する。
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Causes of Carryover |
無理な使い切りを行わなかったため、少額(201円)の次年度使用額が生じた。ただし少額であるため、翌年度分として請求した助成金と合算して当初の研究計画を推進する。
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