2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of fluorine-containing thiourea with C2 symmetry
Project/Area Number |
19K05470
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山崎 孝 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40191267)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | C2対称 / チオウレア / フッ素化合物 / 有機触媒 / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度には、我々の標的としているAr-CH(NH2)-CF3型の構造を元にしたC2対称性のチオウレア類を合成する目的で、比較的容易に合成できそうな3種類のアミンを光学活性体として調製し、これを元にして最終的に求めるチオウレア触媒を得ることに成功した。また、Ar基を更に嵩高くした3,5-Ph2-C6H3-や3,5-(CF3)2C6H3-の合成にも挑戦し、前者では、Ph基導入の際にアミンのエピメリ化が観測され、最終生成物のジアステレオマー比が低かったために、合成手法の変更を余儀なくされ、キラルなスルフィニルイミンを経由する方法に変更した。一方、後者のトリフルオロメチル体では、アミンの求核能力が大きく低下した結果、最終生成物まで到達できていない。 ここまで、合成したキラルな4種類の触媒の能力を検討することとした。様々な反応を試みた結果、比較的良好に進行した1) インドールとβ-ニトロスチレンのFriedel-Crafts型反応、2) アセチルアセトンのβ-ニトロスチレンへのMichael付加反応、3) ニトロメタンとN-BocイミンとのAza-Henry反応の3つを選択し、詳細な検討を行った。1)では、触媒のAr基が1-Naphの時にエナンチオ選択性が極大となったものの、最大でも20% ee程度に留まった。一方2)では、Ar基が最小のPh基の時にエナンチオ選択性が高くなった。この系で詳細なNMR実験を行ったところ、触媒はアセチルアセトンと優先的に相互作用し、その複合体にβ-ニトロスチレンがCF3基を避けてPh基側から反応してくることが明らかとなった。3)は、N-Bocイミンと触媒から形成される複合体の反応点が、1)や2)の場合よりも触媒に近いことが予想されたことから、より高い立体選択性が達成できるものと期待され、実際に72%の化学収率かつ55% eeの立体選択性を達成することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、現在までに4種類のチオウレア合成に成功しており、しかもこれらが実際に様々な反応を触媒する能力を有していることが明らかとなっている。更に、当初試していた反応ではたかだか10% ee台の立体選択性しか発現しなかったが、反応点が触媒の不斉環境により近づくような系を見出してやれば、更なる向上も可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述したように、我々が今回の研究で新たに合成した触媒では、求核剤との反応が電子豊富なCF3基を避けて、より立体的に嵩高いAr基側から進行することが見えてきた。そこで、Ar基を嵩高くすることはかえって不利であるとの考えに基づき、Ar=Phの触媒を用いて、室温程度では反応時間が比較的短いAza-Henry反応に集中し、より低温における反応において、更なる溶媒の選定等を絡めながら、高選択性の発現を目指す。また、類似の触媒で逆の面選択性を発現させることを目的に、Ar=3-Me2NCH2-C6H4-の合成を目指す。これができれば、Takemoto触媒と同様に、Ar基上のジメチルアミノ基が塩基となって求核剤を活性化するため、Ar基側からの求核攻撃が促進されることが期待できる。
|