2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of synthetic methodology by combination of the Michael addition reaction and the chemistry of alkylidene carbenoids
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19K05471
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
重田 雅之 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70607514)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カルベノイド / 連鎖反応 / ハロニウム触媒 / 触媒的異性化反応 / 幾何異性化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マイケル付加反応の深化によるアプローチにて現状の制約に捉われないアルキリデンカルベノイドの新たな類縁体を発生させることで,アルキリデンカルベノイドのビニル位にヘテロ原子が導入された既存法では合成困難な化学種の利用法の開発を目指したものである。本年度は,アルキリデンカルベノイドの利用法の開発とフェナントロインドリジジン類の合成経路の探索に取り組んだ。 1) ハロゲン化された末端アルキン(アルキニルハライド)から独自の手法で調製したスルホニルエナミドを合成の鍵中間体としてカルバモイル基と炭素鎖が置換した全置換オレフィンの合成法を開発した。この手法の特徴は,次項にて詳細に記載しているように,オレフィンの幾何異性体の各々を高選択的に調製できる点にある。 2)スルホニルエナミドの強塩基条件下での脱プロトン化と続く求電子剤との反応にて,触媒量のアルキニルハライドの存在によってオレフィンの幾何異性が反転することを偶然に見出した。この反応は,アルキニルハライドがハロニウム源として機能し,連鎖的にビニルアニオンが次々に異性化した結果であり,奥彬先生がJ. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 2189およびJ. Org. Chem. 1988, 53, 3089にて報告した「アルキリデンカルベノイドの発生法の開発と不活性結合への挿入反応」を異性化反応に発展させた知見であると考えている。 3)フェナントロインドリジジン類の効率的な合成法の確立を志向して,前年度に開発したカルボン酸アミドによる分子内アルキンへの付加反応にて,母核をフェナントレンに代えてスチルベンとする経路の実現可能性を検証した。検証の結果,フェナントレンが適切であることがわかった。すなわち,事前の調製により多くの工程を要するものの,副反応を抑制できることから,事前にフェナントレンにすることで,全体として効率的な合成経路を確立できると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 全置換オレフィンの合成:アルキニルハライドから独自の手法で調製したスルホニルエナミドにリチウムアミドを作用させることで,ビニル位のプロトンが選択的に引き抜かれて種々の求電子剤と反応することを見出した。得られたビニル位修飾体から既存法を準用してカルバモイル基と炭素鎖が置換した全置換オレフィンを合成し,この一連の反応にて全置換オレフィンの新たな合成法とした。 2)スルホニルエナミドの幾何異性化反応: スルホニルエナミドの強塩基条件下での脱プロトン化と続く求電子剤との反応において,触媒量のアルキニルハライドの存在により,オレフィンの幾何異性が反転することを見出した。すなわち,アルキニルハライドが存在することで,これがハロニウム源として機能してカルバニオンのハロゲン化が起こり,gem-ジハロオレフィンが反応系内で発生する。このハロゲン化を契機として元来から置換していたハロゲン原子にてハロゲン-金属交換反応が起こり,結果としてビニルアニオンの幾何配置が反転した生成物が得られた。 3)フェナントロインドリジジン類の合成:フェナントレンをスチルベンに代えたところ,元来存在していたアルキニルハライドに加えて,スチルベンのオレフィンもマイケル受容体として機能したため,各工程,当該副反応を抑制するための条件検討を必要とした。スチルベンを分子内カップリングにてフェナントレンに変換するまで今後も同様の副反応が懸念されるため,より効率的に合成するには,早期にスチルベンをフェナントレンに誘導することが賢明であると結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
アルキリデンカルベノイドの反応開発にて当該年度に報告したハロニウム触媒系を参考にして,今後は,ハロニウム以外の化学種が触媒として機能するアルキリデンカルベノイド特有の反応を探索する。これまではアルキリデンカルベノイドをカルベン発生を回避しカルバニオンとして利用する形態が多かったが,今後はカルベンの性質に基づく分子変換を指向して,アルキリデンカルベノイドの反応を開発する。 また,代表者の所属変更に伴い,当初の予定に加えてアルキン以外の共役系にてハロゲンを電子吸引性基とするマイケル付加反応を探索し,カルベノイドとのさらなる融合形の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受けて前々年度の研究経費を前年度に持ち越しており,前年度についても一定程度のコロナ禍の影響が残ったため,次年度使用額が生じた。本研究資金を活用して,未踏領域とされてきたハロゲンを電子吸引性基とするマイケル付加反応の開発とその生成物の利用法の拡充を目指して,当初より計画を充実させて翌年度の研究に取り組む。
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