2020 Fiscal Year Research-status Report
二核パラジウム触媒による反応位置の制御可能な芳香環直接官能基化反応の開発
Project/Area Number |
19K05475
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
塚田 直史 静岡大学, 理学部, 准教授 (70292240)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | パラジウム触媒 / 炭素水素結合活性化 / チオフェン / ベンゾチオフェン / ベンゾフラン / アルケニル化反応 / アリール化反応 / 二核錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)前年度に引き続き、パラジウム触媒を用いたチオフェンの直接アルケニル化反応について検討を行なった。前年度の研究において、ヨードシクロアルケンをアルケニル化剤に用いることでβ位アルケニル化体が高収率、高位置選択的に生成することを見出しており、令和2年度はヨードシクロアルケンを用いたα位選択的なアルケニル化反応について検討した。α位選択的なアリール化反応は数多く報告されており、それらの反応条件を参考に様々なパラジウム触媒の検討を行った。いくつかの反応でα位アルケニル化体が位置選択的に生成したが、収率は満足できるものではなかった。収率向上が今後の課題である。 (2)これまでのアルケニル化反応の知見を基に、位置選択的アリール化反応について検討を行った。これまでに二核パラジウム触媒を用いたベンゾチオフェンの位置選択的アリール化反応を見出しているが、β位選択的アリール化反応に焦点をあて、反応の一般性を調べた。その結果、様々なヨードアレーンに適用できることがわかった。また、既存のα位アリール化反応と組み合わせることにより、ワンポットでのベンゾチオフェンのα位β位連続ジアリール化にも成功した。 (3)ベンゾチオフェンのアリール化反応の位置選択性が添加する銀塩によって逆転することを見出しているが、これがベンゾフランにも適用できるか調査した。同じ反応条件ではβ位選択的アリール化反応は進行しなかったが、α位アリール化反応は進行した。現在、反応条件の最適化を行っているところであり、スルホン酸の銀塩を添加することにより収率が向上することを確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で研究室への立ち入りが制限されたため、当初の予定通りには進行していない。また、α位選択的アルケニル化反応の参考にした既存のα位アリール化反応に再現性の低いものが多く、想定通りに進行していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に得られた知見を基に、計画通りに次の研究を行う。 (1)令和2年度に検討途中であったチオフェンのα位選択的アルケニル化反応の条件検討を行う。さらにその適用範囲についても調査し、有機合成反応としての有用性を示す。 (2)これまでに見出した位置選択的β位アルケニル化反応を、チオフェン以外のヘテロ芳香環の反応に展開する。まず、ベンゾチオフェンのアルケニル化反応から調査を開始する。 (3)これまでにβ位選択的アリール化反応およびアルケニル化反応を開発したが、β位アルキニル化反応は達成できておらず、報告例もない。次年度の検討課題とする。シリルアルキン等の新しいアルキニル化剤を検討することにより、その達成を目指す。 (4)反応機構および位置選択性転換機構を解明し、より広範な有機合成反応への応用を検討する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のため研究室への立ち入りが制限された時期があり、予定通り研究が進行せず消耗品の使用が少なかった。次年度の消耗品購入に使用する予定である。また、研究で使用していた分析機器(ガスクロマトグラフィー)が故障したため、修理あるいは更新にその一部を使用する予定である。
|