2020 Fiscal Year Research-status Report
Efficient Synthesis of Heterothienoacenes via Heteroatom-Bridged Precursors and Their Properties
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19K05477
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
光藤 耕一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40379714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チエノアセン / ヘテロアセン / C-H結合活性化 / C-H官能基化 / 炭素-硫黄結合 / 炭素-酸素結合 / 有機電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、これまでは無機材料が主流であった半導体や太陽電池の分野において有機半導体を用いた有機電界効果トランジスタ(OFET)や太陽電池が注目を集めている。そのため、様々な有機半導体分子の合成と物性が盛んに研究されている。特に様々なヘテロ原子を導入したヘテロアセン類が有機電界効果トランジスタに有用な分子注目され、様々な誘導体報告されている。なかでも最も広く研究されているのが硫黄原子を有するチオフェン骨格を導入したチエノアセン類と、さらに他のヘテロ原子をも組み込んだヘテロチエノアセン類である。その構造によって著しく性能が変化することがわかっているため、様々な構造のチエノアセン・ヘテロチエノアセン類が合成され、その移動度が報告されているが、その合成法はまだまだ限られていた。 本研究では効率的な新規チエノアセン類を合成する手法として、ヘテロ架橋構造の構築とC-H結合活性化反応により、効率的に構築する方法を開発すると共に、得られる新規多環チエノアセン類の物性解明をおこなうことを目的とし、研究を行っている。昨年度までに酸素架橋した前駆体を縮環することで効率的にフラン環を有するヘテロアセン類を合成することに成功するとともに、そのさらなる分子変換をおこなった。また、炭素-硫黄結合、炭素ー酸素結合をC-H結合活性化反応により効率的に構築する触媒系の開発に成功し、これを応用することで、効率的にヘテロアセン類を合成する手法を見いだしている。本年度は炭素架橋前駆体の環化反応によるフルオレノール誘導体の効率合成に成功するとともに、従来法では合成困難なヘテロ環が縮環したフルオレノール誘導体の合成も達成した。また、遷移金属触媒を用いた新規炭素ー硫黄結合形成反応を見いだすとともに電気化学的手法を用いた炭素ーリン結合形成反応を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたアプローチであるヘテロ架橋前駆体からのヘテロアセン類の合成としては、酸素架橋前駆体をC-H結合活性化反応により、環化し、新奇ヘテロアセンを合成することに成功した。また、それだけでなく、得られた新奇ヘテロアセン類の興味深い物理学的・化学的特性を明らかとなりつつある。また、ヘテロ原子だけでなく、カルボニル基で架橋した前駆体を用いることで、新規フルオレノン誘導体の合成にも成功している。 当初予定していなかった新たな展開として、C-H結合活性化による炭素ー酸素結合、炭素ー硫黄結合形成反応も見いだし、これらの反応を有効に用いることで新たな新奇ヘテロアセン類を合成することにも成功している。これらの反応はその反応機構も精査し、単に合成のツールとして用いるだけではなく、その反応の本質を確かめるべく、様々な角度から研究もおこなっている。 また、電気化学的なC-H結合活性化反応の開発に成功し、遷移金属を用いずとも炭素ー硫黄結合、炭素ーリン結合を形成してヘテロチエノアセン類を構築することに成功した。ヘテロアセン類の合成には遷移金属触媒を用いるのが一般的であるが、これらは希少で高価なだけでなく、合成したヘテロアセン類への混入がしばしば問題となった。本手法はこれらの問題を一気に解決するものであり、その合成的価値は極めて高いと言える。また、これらの見いだした新規反応はヘテロアセンを構築する 上で新たな合成的アプローチを可能とするので、従来法では合成が難しかった分子群へのアプローチを容易にすると期待できる。よって、現在まで進捗状況としては、当初の予定した計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるので、これまでに見いだした反応を駆使することで、多様なヘテロアセン類を合成し、その物理的・化学的性質を明らかにし構造活性相関の解明をめざす。 さらには複数の架橋部位を有する環化前駆体を合成し、これをC-H結合活性化による環化反応に供することで高度に縮環したヘテロ架橋チエノアセンの合成をめざす。現在、汎用性の高い環化前駆体の前段階までは合成できており、環化前駆体への変換に取り組んでいる最中である。期間内にさまざまなヘテロ原子で架橋した環化前駆体へと誘導し、その環化反応を達成したい。 また、当初予定していなかった、電気化学的手法、あるいは遷移金属触媒を用いた炭素ー酸素結合、炭素ー硫黄結合、炭素ーリン結合形成反応の開発に成功しているので、これらの手法を駆使して、新たなヘテロアセン類の合成をめざす。電気化学的手法、遷移金属触媒を用いた手法のいずれもがそれぞれの長所を有しており、これらの手法を相補的に用いることで、効率的に新規チエノアセン類を合成したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で出張がほぼなくなったため、次年度繰越額が発生した。しかし、研究の進捗は順調であり、多くの実験を行う必要があるため、本年度は当初予定してよりも多くの消耗品費が予想される。
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