2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the Origin of Homochirality of Chiral Organic Compounds by Using Asymmetric Autocatalysis
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19K05482
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
そ合 憲三 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (90147504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 常臣 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (40385513)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不斉自己触媒反応 / グリシン / 絶対不斉合成 / Soai反応 / ホモキラリティー / ピリミジルアルカノール / ジアルキル亜鉛 / ピリミジンカルバルデヒド |
Outline of Annual Research Achievements |
生物はL-アミノ酸などに示されるように,像と鏡像の関係にあって重ね合わせることができない一方のキラル化合物のみから成り立っており,その起源は生命の起源にも関連する長年の謎とされている。本研究では鏡像体過剰率が増幅する不斉自己触媒反応(the Soai reaction)を用いてホモキラリティーの起源を解明することを目的とする。 まず,不斉源を用いないで不斉を発生させる絶対不斉合成として,ピリミジン-5-カルバルデヒドの粉末状結晶(固相)に対し,ジイソプロピル亜鉛を気相状態で作用させた。その結果,生成物であるピリミジルアルカノールのS体またはR体が検出限界以上の鏡像体過剰率で生成し,SとR体の出現比率は統計的分布に従うことが明らかになった。最初にSまたはR体が僅かに優先的に生成し,続く不斉自己触媒反応により生成物の鏡像体過剰率が向上するものと考えられる。さらなる不斉自己触媒反応により,ほぼ純粋な鏡像体に向上させることができる。以上,固相-気相状態での絶対不斉合成を実現した。 つぎにキラルでないアミノ酸であるグリシンが形成するキラル結晶(ガンマグリシン)の絶対構造と円二色性スペクトルの関連を明らかにした。さらにこれを不斉開始剤とする不斉自己触媒反応を行ったところ,ガンマグリシン結晶の絶対構造と対応する絶対配置をもつピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で得られた。以上により,キラルでない唯一のアミノ酸であるグリシンが形成するキラル結晶(ガンマグリシン)が,不斉の起源として作用し得ることを明らかにした。また,硫酸トリグリシン結晶が,電場の方向によりそのキラリティーが変化することから,これを不斉自己触媒反応の不斉開始剤とする不斉自己触媒反応を行ったところ,対応する絶対配置を持つピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不斉源無しで不斉を発生させる絶対不斉合成は,ホモキラリティーの起源解明において長年模索されてきた課題である。一般の化学反応では,不斉源無しで得られる生成物はラセミ体となる。これに対し,本研究では鏡像体過剰率が向上する不斉自己触媒反応を組み合わせることにより,固相-気相での絶対不斉合成を実現した。絶対不斉合成は長い有機反応の歴史の中でも極めてユニークなものであり,不斉の発生に関して意義が深い成果であると考えている。 また,グリシンは天然の20種類のアミノ酸のうち唯一アキラル(キラルでない)であることが知られている。このアキラルグリシンが形成する通常最も安定な形であるガンマ型キラル結晶多形(ガンマグリシン)が,ホモキラリティーの起源となり得ることを不斉自己触媒反応を用いて示すことができたことは,幅広い範囲からの興味を集めるものと期待される。 また,硫酸トリグリシン結晶では,電場の向きで結晶キラリティーが制御可能なことを詳細に検討して確実なものとすることができている。さらに不斉自己触媒の不斉開始剤となることを明らかにできている。
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Strategy for Future Research Activity |
硫酸トリグリシン結晶を不斉開始剤とする不斉自己触媒反応を検討し,確立する。アキラルな有機化合物が形成するキラル結晶が,不斉自己触媒反応の不斉開始剤となり得ることを検討する。特に,アキラルなジアリールケトン類について検討を行う。また,キラルな金クラスターを不斉開始剤に用いることも検討する。アキラル有機化合物が形成するアキラル結晶であっても,結晶面がキラル(エナンチオトピック)であるものがあり,これらのエナンチオトピック面で不斉自己触媒反応を開始させて不斉を誘導することを検討する。
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Causes of Carryover |
2019年度末にかけて(2020年3月),コロナウイルスのため,学会開催が複数中止され,予定していた学会出張旅費および学会発表準備に伴う物品費等の使用を中止したため。2020年度に合わせて積極的に学会発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)