2019 Fiscal Year Research-status Report
有機分子触媒を活用する不斉四級炭素の構築とビブサン型ジテルペンの系統的合成
Project/Area Number |
19K05488
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
原田 研一 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (70441590)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ネオビブサニン / 不斉アルドール反応 / チェノポデン / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はビブサニン類の 3 種全てのサブタイプを合成可能にする系統的な合成法を確立し、構造と神経栄養因子様活性との相関を解明する有機合成化学を中心とする研究である。本合成研究では、ビブサン型ジテルペンに共通する四級炭素を含む二連続不斉炭素の構築法、および共通中間体から前例のない新規な各サブユニットへの骨格変換法を開発、全てのビブサニン類へ応用可能な系統的合成を確立する計画である。ビブサン型ジテルペンに属するネオビブサニンは、強力な神経栄養因子様活性を示すことから神経変性疾患治療薬のリード化合物として期待されている。しかし、ビブサニン類は植物中の微量成分であること、また、その一般的な合成法が確立されていないことから、活性発現機構やサブタイプ間での活性の違いについては未だ不明である。本研究では、ネオビブサニンを基盤とする神経変性疾患治療薬の開発を最終目標として、不斉炭素の立体化学を制御したビブサン型ジテルペンの系統的合成法を確立するとともにサブタイプ間での活性評価をおこなうことにした。2019年度は当初の計画に従い、エナンチオ選択的アルドール反応と隣接する三級炭素の不斉導入法を確立し、ビブサン型ジテルペンの共通合成中間体を合成することができた。また、この方法論の有用性を証明するために、ネオビブサニンと類似の基本骨格を有するセスキテルペン (-)-チェノポデンの合成に応用し、不斉合成を達成することにも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従い、エナンチオ選択的アルドール反応の開発から研究を開始した。反応基質となる1,7-ケトアルデヒドに対して種々のプロリン系有機触媒を用い、不斉アルドール反応を検討した。反応条件を精査した結果、Hua-catを触媒として用い、トルエン溶媒中で反応させることで81%の収率、84%eeのエナンチオ選択性で目的物が得られることがわかった。得られたアルドール構造をp-ブロモベンゾエートで保護すると、結晶性があがり、再結晶法によりエナンチオ過剰率を99.5%まで向上させることに成功した。この方法により、光学純度の高い合成鍵中間体を得た。この方法論の一般性と有用性を確認すべく、開発した不斉アルドール反応を応用し、ネオビブサニンと類似の基本骨格を有するセスキテルペン (-)-チェノポデンの不斉合成をおこない、その不斉合成を達成することに成功した。合成の一環として改良Mosher法をおこなうことでアルドール体の絶対立体配置を決定することもできた。 基本となる合成法を確立することができたので、ネオビブサニンの合成に着手した。まず、構築した不斉四級炭素に隣接する三級炭素のジアステレオ選択的な導入法を検討した。鍵中間体の[2.2.1]-ビシクロ骨格を利用して、求核付加反応で側鎖部を導入すると、完璧な立体選択性で反応が進むことがわかり、詳細に反応条件を調査した結果、高収率かつ高立体選択的な不斉三級炭素構築法を見出すことに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は研究計画に従い、概ね実施することができた。しかしながら、最終目標であったネオビブサニンの全合成には至らなかったため、次年度はまずこれを達成する予定である。ネオビブサニンの合成後は、当初の計画に従い、異なるサブタイプである7員環型ビブサニンの合成に着手する。7員環骨格の合成では鍵となる環拡大反応の検討から開始する。
|
Causes of Carryover |
当初、2019年度にネオビブサニンの合成を完了させる計画であったが、合成法の一般性および有用性を示すためにチェノポデンの不斉合成を優先しておこなった。これにより、新規に購入予定であった試薬およびガラス器具類を購入しなかった。これらについては次年度に購入を予定している。また、本課題に関連する研究内容の一部を日本薬学会第140年会で発表予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、学会が中止となり、その旅費を使用しなかった。この旅費についても次年度の学会活動で使用予定である。
|