2019 Fiscal Year Research-status Report
金属錯体の強発光によって制約を受けない過渡吸収分光観測と光触媒反応の未踏域開拓
Project/Area Number |
19K05498
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
末延 知義 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90271030)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 過渡吸収 / 金属錯体 / 光触媒 / ダイナミクス / 発光 / 反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
光触媒は、近年、有機合成分野でも幅広く利用されるようになり、熱励起では不可能とみなされる高難度物質変換反応を可能にするなど、光触媒反応系の開発は目覚ましい発展を遂げている。そこで本研究では、新しい光源(400億分の1秒幅のパルス状の光の列)を用いた新しい光吸収分光法(RIPT過渡吸収分光法)によって、光励起された分子が100億分の1秒の時間スケールで起こす高速現象の観測を行った。本手法では、従来法では測定を行う際のボトルネックとなっていた光触媒自身の強い発光に邪魔されること無く、時間分解過渡吸収スペクトルの観測が可能である。光触媒として有望な様々な物質を探索し、それらを光触媒反応に応用して未発見反応条件や未知反応経路を探索し、光触媒反応の未開拓領域に挑戦した。光触媒は、それ自身が電子の授受や、水素化・脱水素化、異性化等を担うだけでなく、光エネルギーにより電子伝達を促進する有機、無機光増感剤や、水素発生や水の酸化を担う金属ナノ微粒子などと組み合わせて用いられることが多く、多成分の反応ダイナミクスが関与する複雑系とみなされる。そこで、光触媒反応初期過程の過渡吸収(TA)や過渡発光の観測によって、短寿命光活性種(励起状態、イオン、ラジカル、電荷キャリヤー、光反応中間体など)、反応中間体や遷移状態の直接その場観察を行い、その複雑系の中身を「見える化」して研究成果を国際論文誌に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度終盤の研究成果の取りまとめを兼ねた一部の外部発表(国際会議招待講演)が、新型インフルエンザ感染防止のための政府の自粛指示に従って取り止めとなったために叶わなかったが、逆境に屈する事なく自粛期間中に受理された論文も有り、概ね順調に研究は進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規な単核および多核金属錯体、有機金属錯体を合成して過渡吸収(TA)や過渡発光の観測を元に様々な光物性の起源を解明し、その応用探索を行う。また、合成した金属錯体を光触媒に応用すると同時に、光電子移動や励起状態のスピン多重度変換(系間交差)、励起子分裂や融合、熱励起遅延蛍光過程や蓄光といった光物理過程に関する情報を得る。さらには、成果取りまとめ、成果発表を行うと同時に、得られた新物性を基に遷移金属錯体を用いた有機デバイス開発にも展開可能と考えている。
|
Causes of Carryover |
初年度購入を予定していたが入手が困難であった一部の光学部品を次年度購入とし、その代わりに優先すべき必要試薬や分析用試薬などの購入にあてたため、その差額は次年度以降に使用する。また、新型インフルエンザ対策のための政府要請に従って研究活動、特に成果公開のための学会発表を3月末から自粛したため、そのために想定していた経費(主に旅費)は止むを得ず次年度予算として振り替えた。
|
Research Products
(33 results)