2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Reductive Carbon-Carbon Bond formation with Dihydrogen as an Electron Source
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19K05503
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷田部 剛史 九州大学, 工学研究院, 助教 (00748387)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒドロゲナーゼモデル / 水素酸化 / 異性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水素の電子を利用した新規の炭素ー炭素結合生成反応の構築である。今年度は、NiFeヒドロゲナーゼモデル錯体を用いて、水素からの電子抽出における触媒の重要な構造因子を明らかにした。天然には、活性中心の金属イオンの違いによる3種類のヒドロゲナーゼ([NiFe]、[FeFe]および[Fe]ヒドロゲナーゼ)が存在する。それぞれのヒドロゲナーゼは、水素酸化、水素発生およびヒドリド移動を得意とする。その活性状態であるヒドリド種の構造に着目し,単一のNiFeヒドロゲナーゼモデル錯体を利用して、ヒドリド配位子の位置が異なる3種類の異性体のモデル錯体を合成した。新規のNiFeヒドロゲナーゼモデル錯体のヒドリド種は、再結晶を繰り返すことで単離することに成功し、その分光学的データおよび電子移動、水素発生およびヒドリド移動に対する反応性の違いを明らかにした。ヒドリドがNiとFeの間に架橋している異性体は、電子移動を得意とし、ヒドリドが末端の残りの2つの異性体は、それぞれ水素発生とヒドリド移動を効率的に行うことがわかった。また、分光学的データからは、架橋ヒドリド異性体は、他の異性体に比べてヒドリド配位子の電子密度が最も低いことがわかった。 すなわち、水素から電子を取り出す反応(水素酸化)をして、その電子を炭素ー炭素結合生成反応に利用するためには、架橋ヒドリド種もしくはヒドリド配位子の電子密度が低い構造を利用することが好ましいことが明らかになった。この結果は、学術論文として掲載される予定である(Science Advances, 2020, in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題の初年度であり、水素の電子を利用する上で基盤となる知見が得られたことから、おおむね順調に進展しているといえる。すなわち、本年度の研究により、水素から電子抽出を行い、炭素ー炭素結合生成反応に利用するための触媒設計指針が得られた。得られた研究成果は、学術論文一報として報告し(Science Advances, 2020, in press)、国際workshopでの招待講演で報告している。また、すでに水素の電子を利用した炭素ー炭素結合生成反応の実験に着手しており、一部の有機ハロゲン化物を基質として水素を利用した炭素ー炭素結合生成反応の進行を確認できていることからも、研究がうまく研究が立ち上がったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた知見をもとに、種々の基質を用いた炭素ー炭素結合反応を進めていく。具体的には、(1)ハロゲン化アリール同士のクロスカップリング反応、(2)ハロゲン化アルキル同士のクロスカップリング反応、(3)アルケンのシクロプロパン化、および(4)芳香族化合物の直接カルボキシル化を重点的に行なっていく予定である。触媒としては、安定性および反応性を考慮して、NiやFeだけではなくRhやIrも利用する。また、反応生成物である有機物の分析だけではなく、触媒の反応中間体を単離および分析することで、触媒反応のメカニズムを明らかにする。これを触媒設計にフィードバックすることで、さらに効率的な触媒系の構築も行なっていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] [NiFe], [FeFe], and [Fe] hydrogenase models from isomers2020
Author(s)
Seiji, Ogo; Takahiro, Kishima; Takeshi, Yatabe; Keishi, Miyazawa; Ryunosuke, Yamasaki; Takahiro, Matsumoto; Tatsuya, Ando; Mitsuhiro, Kikkawa; Miho, Isegawa; Ki-Seok, Yoon; Shinya, Hayami
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Journal Title
Science Advances
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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