2020 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属化合物と微小球状高分子媒体の複合化による新規発光システムの開発
Project/Area Number |
19K05506
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 亮孝 高知工科大学, 環境理工学群, 講師 (20708060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遷移金属化合物 / 高分子ナノ粒子 / 蛍光 / りん光 / 光誘起反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では微小球状イオン交換樹脂「ナノイオンキャリア」のもつ分子構造や担持材料の柔軟性に着目し、遷移金属化合物と複合化した新規発光システムの構築を目指している。現在までに、以下の2つの系について重点的に取り組み、いずれの系においても水分散液状態において極めて強い蛍光を発する系の構築に成功した。 1.重合活性部位を導入した蛍光化合物を共重合することにより、蛍光ユニットを部分的に導入したナノイオンキャリアを合成した。合成したキャリア試料は量子収率0.4以上の強い蛍光を示したほか、キャリア骨格間における励起エネルギー移動の発現が示唆された。また重合条件の検討過程において、これまで難しかったナノイオンキャリアの化学組成や粒径を制御して合成する条件に関する知見を得た。 2.キャリア内部に担持可能な置換基を導入した蛍光化合物を合成し、ナノイオンキャリアに担持した。蛍光化合物を担持したキャリア試料は量子収率0.8を超える極めて強い蛍光を示した。 それぞれの系について遷移金属錯体を担持した複合試料を調製したところ、いずれの系においても担持した遷移金属錯体からキャリア内に共存する蛍光ユニット/化合物への励起エネルギー移動が観測されなかった。研究代表者らは、系2の実施に先立ってナノイオンキャリア内に共担持した遷移金属錯体と消光剤間における光誘起反応が高効率かつ高速で起こることを学術論文として報告している。それぞれの系に対する光化学物性の詳細な検討から、増感色素として使用している遷移金属錯体の物性が光誘起反応の挙動に強く影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共重合と担持という2種類の手法により強い蛍光を発するナノイオンキャリア試料を得ることに成功した。また、キャリア内部に共担持した化学種間の光誘起反応挙動を明らかにすることができた。以上より、本研究の目的を達成するために必要な素過程の情報を獲得できている。これらは当初の計画をよく反映した進行度であり、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見から、ナノイオンキャリア内において高効率な光誘起反応が期待される遷移金属錯体の物性が特定されている。そこで、ナノイオンキャリアに担持できるよう誘導体化した遷移金属錯体や蛍光部位の種類・量を系統的に変化させた複合ナノイオンキャリア試料を調製し、目的とする水中アップコンバージョン蛍光現象の観測を目指す。また、これまでに得られた知見を活用し、配位部位を有する新規ナノイオンキャリアの合成に取り組み、希土類イオンとの複合化を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により成果発表を行う学会等が中止またはオンライン開催されたことから次年度使用額が発生した。当該予算は、次年度の金属試薬ならびに分光測定システムを構築するために必要な光学部品・機器の購入により使用する予定である。
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