2021 Fiscal Year Research-status Report
Basic Chemical Research on Active Oxygen in Fine Bubbles for Food Science
Project/Area Number |
19K05507
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
倉橋 拓也 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (90353432)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | オゾン / ファインバブル / 酸化 / アルコール酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素ガスファインバブルを化学反応に活用するために、酸素ガス導入と基質導入を可能にする反応装置を独自に構築した。本装置を使って酸素酸化反応を試みたが、目的とする化学反応を効果的に進むことは認められなかった。酸素ガスファインバブル溶液にヒドロキシラジカル種の生成が観測されたとの報告例があったが、ヒドロキシラジカルに期待される反応活性はなかった。 そこで本装置を無触媒のオゾン反応に活用することを検討した。オゾン濃度とガス流量を制御することによって、反応系中に導入するオゾンの物質量を制御した。また基質もシリンジポンプを用いて導入することで、オゾンとの接触時間を制御した。 典型的な基質として水溶性アルコール類との反応を検討したところ、オゾンは1級アルコールとも2級アルコールともほぼ同じ効率で反応することがわかった。2級アルコールからはケトンがほぼ定量的に生成することがわかった。ケトンの収率は6割程度であるが、装置特性上、低分子量の基質や生成物が揮発することを考慮すると、かなりの高収率であると言える。一方、1級アルコールからはカルボン酸が生成することがわかったが、カルボン酸の収率はケトンに比べて大きく低下していた。これは、1級アルコールの1段階目の参加で生じるアルデヒドが特に揮発性が高いため、反応系中から失われた結果であると考えられた。 予備的な検討として、アルカンであるブタンガスとの反応も検討した。主としてbutanoneが生成し、わずかに2-butanolやbutanoic acidの生成も確認された。butanoneの収率はオゾンベースで10%程度と非常に低いので更なる検討が必要ではあるが、反応活性が低いとされるアルカンとの反応が観測された意義は大きいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オゾンファインバブルの反応で、非常に有望であると考えられる結果が得られた。触媒を使用しなくても制御された強力な酸化反応が可能になると期待されるので、食品分野への応用が強く期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
論文取りまとめに向けて、オゾンファインバブルによるアルコール酸化反応について検証を進める。論点の一つは、生成物であるケトン類の酸化が抑制されている点である。作業仮説として、オゾンとの反応でオキシランが生成して、オゾン分解に関与しているのではないかと推測している。 2つ目の論点は、オゾン反応の重水素効果である。新規開発した反応装置を活用することで、オゾン反応を定量的に検証することが初めて可能になった。これまでに1級アルコールと2級アルコールの反応性について検討を行い、反応性に差異が見られないことを明らかにしている。本年度は重水素の効果について検証を行う。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染症対策に関わる大学用務が研究期間中に生じた結果、必ずしも十分な研究時間を確保することができなかった。1年間延長することで、研究期間中に見出した成果をもとに研究を進めて論文の取りまとめを目指したい。本年度は、主として試薬等の購入を計画している。論文投稿に必要な費用についても支出する。
|