2020 Fiscal Year Research-status Report
金属錯体-半導体ハイブリッド光電極による金属錯体CO2還元触媒の反応機構解明
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19K05516
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Research Institution | Toyota Central R&D Lab., Inc. |
Principal Investigator |
関澤 佳太 株式会社豊田中央研究所, 森川特別研究室, --- (00783458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CO2還元 / 反応機構 / 金属錯体-半導体ハイブリッド光電極 / 光電気化学 / 理論計算 / Ru錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンニュートラルに向けた技術として、水と太陽光を用いて二酸化炭素(CO2)を還元し、有用な化合物に変換する人工光合成は有望な手段の一つである。CO2に2電子を供与すれば、還元生成物として、COまたはHCOOHが得られる。COは、化成品や合成燃料の原料として、HCOOHは水素貯蔵媒体や抗菌剤として、それぞれ付加価値の高い化合物である。これらCO2の2電子還元を進行させる触媒として、金属錯体触媒が数多く報告されているが、いずれの金属錯体触媒においても、CO2還元の反応機構の解明が十分に進んでいない。このため、COとHCOOHを作り分けるための触媒の分子設計の指針が得られていない。 本研究では、金属錯体-半導体ハイブリッド光電極を用い、光と電気化学を組み合わせたアプローチにより、生成物選択性の決定因子を調べる。さらに、計算化学により、実験的観測が困難な反応中間体の構造、分子軌道や反応のエネルギープロファイルを理論的に解析し、金属錯体によるCO2還元反応の全体像解明を図っている。 [Ru(bpy)Cl2(CO)(CH3CN)]触媒をp型半導体の表面に担持した金属錯体-半導体ハイブリッド光電極の光電気化学測定を行った。反応条件を変えることで、Ru錯体触媒への電子、CO2およびプロトンの供給速度を独立に変調させ、そのときのCO/HCOOH生成比の変化を調べた。さらに、NMRおよびFT-IRを用いたin situ分析を行い、電気化学反応における中間体を観測した。これらの実験結果からCOおよびHCOOH生成の反応機構モデルを考案した。この反応機構モデルにおいて想定される反応中間体の候補について、密度汎関数法による構造最適化および振動解析計算を行った。その結果、反応全体の自由エネルギー変化が室温で進行しうる範囲にあり、かつ実験結果とも整合する反応機構を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[Ru(bpy)Cl2(CO)(CH3CN)]触媒をp型Fe2O3半導体の表面に担持した金属錯体-半導体ハイブリッド光電極において、反応溶液のプロトン濃度が、CO, HCOOHおよびH2生成比率に及ぼす影響を新たに明らかにすることができた。これに基づく、新たな反応機構を推定し、そこに現れる反応中間体の計算を進めた。始状態から中間体を経て終状態に至る反応のエネルギープロファイルを作成し、障壁の低い経路を繰り返し探索した結果、実験結果と対応する機構を導出することができた。また、電気化学反応におけるin situでのFT-IRおよびNMR分析法を確立し、反応中間体の観測に成功した。学術論文への投稿が遅れたものの、研究としては当初の計画よりも深めることができた。以上より順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、これまでに構築した[Ru(bpy)Cl2(CO)(CH3CN)]のCO2還元反応機構に、遷移状態解析を導入し、反応速度論を含めた検証を行う。これらの結果について、学術論文への投稿を行う。さらに、反応条件によってHCOOHとCOの生成比が大きく変わる[Mn(bpy)(CO)3Br]について実験、計算の両面で検討を進める。この内容について、学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、発表予定の国内および国際学会がいずれも中止または延期となったため、次年度使用が生じた。次年度は、延期になった学会への旅費や、外部計算機システムの使用料として利用予定である。
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