2019 Fiscal Year Research-status Report
有機表面修飾Ptナノ粒子触媒の酸素還元反応におけるin-situ酸素種評価法開発
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19K05522
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宮林 恵子 静岡大学, 工学部, 准教授 (50422663)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 表面修飾 / 酸素還元反応 / 燃料電池 / コロール |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物で修飾した白金ナノ粒子は、酸素還元反応の電極触媒として高活性を示し、表面修飾が新規触媒特性向上手法として期待されているが、その特性向上機構は明らかでない。本研究では、反応基質および被毒種に含まれる酸素原子を含む化合物に着目し、修飾触媒の界面評価法を確立することで、有機表面修飾による特性向上機構を解明することを目的とした。2019年度には、バルク白金電極を用いて回転電極法と電気化学交流インピーダンス法(EIS)を用いて、酸素種評価法を検討した。水の解離で生じたOH種の吸着を確認するためEIS測定した。スペクトルの等価回路解析では、溶液抵抗と分極抵抗および二重層容量に対応する等位相素子によりフィッティングした。0.8V以下では水の解離により生成したOH吸着が生じ、0.8V以上では、酸素原子の吸着と考えられる。電位に対して、等位相素子の指数成分をプロットした結果、指数成分が0.85Vで減少しており、表面吸着種の相転移が起こっていることが確認できた。 新しい電極触媒材料として注目されている窒素を含む芳香族で二価の配位場を形成するポルフィリンや三価の配位場を形成するコロールを新規表面修飾剤として検討した。新規表面修飾剤として、5,10,15-Triphenylcorroleを合成した。コロールは、中央にNHを3つ有し、三価までのアニオンを形成し高価数の金属を安定化する。合成した修飾剤を市販触媒へ混合することで修飾触媒を得た。比較として二価の配位子場を有するテトラフェニルポルフィリンで修飾した触媒も調製した。調製した触媒について、XPSで電子状態を評価した結果、コロール修飾触媒のPt4fピークは、ポルフィリン修飾触媒と比較し低結合エネルギー側にシフトしており、異なる価数の配位子場を有する修飾剤により白金の電子状態が制御可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回転電極法とEISを組み合わせ、表面吸着酸素種の定量法と触媒層への酸素濃度評価法を確立するため、まず、バルク白金電極を用いて不活性雰囲気中、EIS測定条件の策定を進めた。酸素還元反応は、0.9V付近で生じることから測定範囲は0.6-1.05Vとした。一回のEIS測定で約20%の白金表面積低下が確認されたため、振幅や測定周波数を種々検討し、振幅5 mV、周波数は、100kHz~1Hzまでとした。さらに電極表面積の影響を除くため、測定毎に電気化学クリーニングにより表面積が一定であることを確認した後、各電位におけるEISデータを取得した。アルゴン雰囲気下での測定の途中、電解質の供給が5か月間停止したため、測定法の確立は中断している。 電解質の供給が停止したため、2020年度以降に進める予定であった新規修触媒の合成を進めた。本研究では、新しい電極触媒材料として注目されている窒素を含む芳香族で二価の配位場を形成するポルフィリンや三価の配位場を形成するコロールを新規表面修飾剤として検討した。2019年度には、既報に従いジクロロメタン中ピロールとベンズアルデヒドの酸化縮合によるフェニル置換コロールを合成した。目的物の合成はNMRとMSで確認した。修飾剤を規定量の市販触媒と混合することで、修飾触媒を調製した。比較としてテトラフェニルポルフィリンで修飾した触媒も調製した。XPSで触媒表面を評価した結果、N 1s由来のピークが確認でき、コロールが触媒表面に存在することを確認した。XPSによる電子状態の評価では、コロール修飾触媒のPt4fピークは、ポルフィリン修飾触媒と比較し低結合エネルギー側にシフトしており、異なる価数の配位子場を有する修飾剤により白金の電子状態が制御可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
①電気化学交流インピーダンス法(EIS)による酸素還元反応条件下での酸素種評価法開発 2020年度5月に電解質が入手可能になったため、評価法の開発を再開する。電解質濃度により酸素種の白金表面への吸着量が変化することから、バルク白金電極を用いて酸素還元反応条件下、EIS測定し、得られたスペクトルの等価回路解析により酸素種の定量法を開発する。吸着量の評価の後、触媒表面の酸素濃度の評価を検討する。市販触媒を用い、電極上の触媒層厚さを変えてEIS測定し、等価回路解析により触媒層への酸素侵入深さを評価する。評価法の妥当性が確認できた後に、2019年度に調製した新規表面修飾触媒へ適用する。カーボン担持触媒はバルク白金とは異なる結果が得られる可能性が想定されるため、評価、解析法を改良する。 ②酸素種吸着を制御した新規表面修飾電極触媒調製 2020年度は、コロールのフッ素置換体を合成し、合成したコロール誘導体で修飾された触媒を調製する。フッ素置換により反応基質である酸素の溶解度が向上すると期待される。酸素還元反応の電極触媒特性およびCOの電気化学酸化によるOHの吸着特性を評価するとともに電極触媒としての特性を評価する。2019年度に、コロール修飾では白金の電子状態が、低結合エネルギーにシフトしている。修飾剤が価数の高い白金を選択的に被覆している可能性があるため、バルク白金表面へコロール誘導体を被覆し、角度分解XPSによりX線の侵入深さを変えて測定し確認する。
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Research Products
(1 results)