2021 Fiscal Year Research-status Report
Application and characterization of gold nanoparticle mass-probe
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19K05528
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新留 康郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (50264081)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マスプローブ / 金ナノ粒子 / 合金ナノ粒子 / 免疫検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
金銀合金ナノ粒子と金パラジウム合金ナノ粒子を調製し、それぞれイオンの脱離効率を評価した。金イオンに加えて、銀イオン、パラジウムイオンの脱離を確認した。銀イオンは金イオン以上に効率良く脱離イオン化したが、パラジウムイオンの脱離効率は低かった。銀には2種類の同位体があり、2種類のイオン(m/z 107 と109)の脱離が観察される。金銀合金ナノ粒子から脱離する14種類のイオン(m/z 107, 109, 197, 214, 216, 218, 304, 306, 394, 411, 413, 415, 501, 503)を評価することにより、夾雑イオンの影響を最小限にして合金ナノ粒子の動態を追跡できることが明らかになった。 金銀合金ナノ粒子の電気化学測定を行い、Ag:Ag=1:1のモル比で調製した場合は、生理条件下ではほとんど銀イオンを溶出させない安定性を有し、同時に十分な強度の銀イオンを与えるマスプローブが得られることを明らかにした。 金ナノ粒子と金銀合金ナノ粒子をゼブラフィッシュに経口接種させた場合の体内動体を追跡した。金ナノ粒子は24時間後にはそのシグナルが夾雑イオンと区別できなくなったが、金銀合金ナノ粒子は72時間後まで計測できることが明らかになった。金ナノ粒子の結果については既に学術論文として公開済みであり、合金ナノ粒子の成果は現在投稿準備中である。 金銀合金ナノ粒子と金パラジウム合金ナノ粒子にそれぞれ抗体を修飾し、サンドッチタイプの抗原抗体結合を作らせることに成功した。金銀合金ナノ粒子と金パラジウム合金ナノ粒子が近接すると、AgPd+イオンが脱離する。このイオンをレポーターとする免疫検出が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金ナノ粒子、および金銀合金ナノ粒子をマスプローブとして用いて、その体内動体を明らかにすることに成功した。いずれも化学的に安定な粒子であり、数日にわたってその体内動態を明らかにすることができた。粒径と表面状態の異なる金銀合金ナノ粒子を調製し、体内動体がどのように変化するかを検討した。直径50 nmを超える粒子は腸管内での滞留性が悪く、速やかに体外に排出されることがわかった。マスプローブを用いた分析法は、ナノ材料が生体に与える影響(ナノリスク)を評価するモデル系としては、感度と再現性に優れた手法であることがわかった。ゼブラフィッシュを用いた実験を進め、その成果を学術論文として報告できるように準備中である。 金銀合金ナノ粒子と金パラジウム合金ナノ粒子の組み合わせを用いて、抗原抗体反応が起きたときだけ銀パラジウムクラスターが生成するシステムの構築に成功した。前立腺特異抗原(PSA)検出ELISAキットの抗体を二つの合金ナノ粒子に修飾し、1 nMオーダーのPSAを検出できることを明らかにした。この技術については国内特許を出願した。さらに、国際出願を行い知的財産の確保に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ材料の体内動態を明らかにするという点では、ナノ粒子のサイズや表面修飾のバリエーションを増やして動態を制御する要素を明らかにする必要がある。直径50 nmを超える粒子を大量に調製する技術の確立に取り組んでいる。また、10 nmより小さいサイズの粒子の動態も明らかにする必要があるが、小さい粒子のレーザー光による脱離イオン化効率は低く、組織切片中でナノ粒子を成長させるなどの新しい技術が必要である。これは小径粒子の均一な調製法と併せて、今後取り組むべき課題である。一連の成果を整理して、学術論文として報告する。 金銀合金ナノ粒子と金パラジウム合金ナノ粒子の組み合わせを用いた免疫検出に関しては、検出限界の改善(少なくとも10-12 Mのタンパク質検出)と検出の迅速化(試料調製に10分以内)を実現する必要がある。銀イオンとパラジウムイオンが適切な割合で脱離し、レポーターイオンであるAgPdイオンが効率良く生成するシステムの構築を行う。一連の研究成果を取りまとめて追加の特許を出願することで、実用技術としての知的財産の基盤を固める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学生の行動が制限されたことと、他大学の高度分析機器の利用ができなかったことにより研究の進捗が遅れた。次年度に繰り越した費用を用いて、体内動態に関わる残りの実験を行い、学術論文としての投稿を早急に進める。免疫検出法については追加の特許を申請できるレベルまで早急に実験を進める。
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