2020 Fiscal Year Research-status Report
高感度・高面分解能な有機系二次イオン質量分析の実現:新規クラスタービーム源の開発
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19K05535
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 幸雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (60415742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 表面分析 / 二次イオン質量分析 / イオンビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry, SIMS)は、試料表面にイオンビーム(いわゆる一次イオンビーム)を照射し、それによって真空中に放出されたイオン(いわゆる二次イオン)を質量分析することにより、試料構成元素(あるいは分子)の同定や濃度測定を行う分析技術である。一次イオンビームとしては、酸素やセシウム等が用いられてきたが、分析対象が有機系材料の場合には、イオンビーム照射に起因する有機分子の断片化(=フラグメンテーション)が避けられず、分子量の大きな二次イオンはほとんど検出できないという技術課題があった。しかし近年では、クラスターイオンを一次イオンビームとして用いることで、比較的大きな有機分子も検出できるようになり、半導体産業のみならず、化学分野等においても、SIMSの応用範囲が広がっている。しかし、分子量の大きな分子を高感度かつ高面分解能で分析することは未だ困難であり、大きな課題となっている。高感度化のためには、プロトン化反応を促進し二次イオン化率を向上させることが有効と考えられる。また、高面分解能化には、集束性の良いクラスターイオンビームが必要と考えられる。そこで本研究では、二次イオン化率と集束性の両方に優れた新規クラスターイオンビーム生成技術の開発を目的とする。具体的には、プロトン性イオン液体を用いることでプロトン化を促進して二次イオン化率を向上させる。また、針型エミッターを用いることで集束性の良いクラスターイオンビームの生成を可能とする。本年度は負イオンビーム生成についても研究開発を開始した。プロトン性イオン液体としては硝酸プロピルアンモニウムを用い、質量電荷比が1000を超える負極性のクラスターイオンを含むイオンビームを生成できた。さらに、エレクトスプレー時における電気化学反応を調べ、揮発性物質の生成を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集束イオンビームとして広く普及している液体金属イオン源は、正極性のイオンビームのみを生成でき、負極性のイオンビームは生成できない。一方、本研究では、プロトン性イオン液体を用いて、プロトンを含有する負極性のイオンビームの生成が可能であることを実証でき、大きな成果と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトン性イオン液体の種類を変えた実験も行う。さらに、二次イオン質量分析への応用実験も行い、二次イオン質量分析における有用性等を調べる。
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Causes of Carryover |
負極性ビーム生成や電気化学実験については、既存装置を用いた実験が可能であったため、当初の想定よりも支出が少なくできた。次年度は、ビーム源を改造し、二次イオン質量分析装置に搭載した実験を予定している。
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Research Products
(1 results)