2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of minimally invasive blood glucose sensors based on near-infrared emitting upconversion nanoparticles
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19K05540
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
遠田 浩司 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (60212065)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オプティカル血糖センサ / コアシェル型ランタノイドナノ粒子 / ビスベンゾボロキソール型グルコースレセプター / レセプター感受性近赤外吸収色素 / 発光共鳴エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚組織による光学的妨害の極めて少ない近赤外光(NIR)を発するアップコンバージョンナノ粒子(UCNPs)に基づく糖センシングシステムを開発することを目的とし,令和元年度はNIR発光コアシェル型ランタノイドUCNPsの合成と評価及びレセプター感受性NIR吸収色素固定化コアシェル型ランタノイドUCNPsの糖に対するNIR発光特性の評価を行った。 1. NIR発光UCNPsの合成:種々のランタノイドをドープしたNaYF4ナノ粒子の調製を試み,アニーリング温度を350℃とすることにより980 nmレーザー照射により800 nmの強いNIR発光を示すNaYF4:YbTmナノ粒子を得た。TEM測定の結果,このナノ粒子は直径約100 nmの六角柱の形状をしていることが分かった。 2. コアシェル型UCNPsの調製とレセプター感受性NIR色素の固定化:得られたUCNPsをTESで処理し,表面をシリカ層で覆ったコアシェル型UCNPsを調製した。TEM測定の結果,コアシェル型UCNPsの形状は球形であり,シリカ層の厚みは約15 nmであった。得られたコアシェル型UCNPs表面をグリシジルメトキシシランで処理し,アジ化後クリック反応によりアルキンを導入したレセプター感受性NIR吸収azaBODIPY色素をUCNPs表面へ導入した。 3. レセプター感受性NIR吸収色素固定化UCNPsの糖に対するNIR発光応答の評価:レセプター感受性NIR吸収色素固定化UCNPsをPBSに分散させ,糖レセプターのモデルとしてのフェニルボロン酸(PBA)を添加した結果,800 nmにおける発光強度が25%減少した(PBA濃度 10 mM)。これはPBAとの錯形成により色素とUCNPs間で共鳴エネルギー移動が起こったためと考えられる。ここに糖としてフルクトースを添加すると,800 nmの発光強度が増大することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度研究計画として,1)NIR発光コアシェル型ランタノイドUCNPsの合成と評価及び2)ナノ粒子表面固定化用グルコースレセプター及びレセプター感受性NIR吸収色素の合成を挙げている。 1)のNIR発光ランタノイドUCNPsの合成については,我々は水熱エマルジョン合成におけるアニーリング温度を一般的な文献における230℃から350℃に上げることにより,粒径の揃ったナノ粒子を合成する技術を確立しており,またNaYF4:YbTmナノ粒子は980 nmの半導体レーザー光照射によりNIRである800 nmの強い発光を示すことを見出している。また,UCNPsナノ粒子のTES処理条件を変えることにより,コアシェル型UCNPsのシリカ層の厚みを制御できることも見出している。 2)のナノ粒子表面固定化用グルコースレセプター及びレセプター感受性NIR吸収色素の合成については,我々は既にアルキニル基を導入したレセプター感受性NIR吸収azaBODIPY色素の合成を完了しており,色素のコアシェル型UCNPs表面への固定化も達成している。 更に,NIR色素固定化UCNPs分散液にレセプターのモデルとしてのフェニルボロン酸(PBA)を加えた後フルクトースを添加すると,NIR発光強度が増大することを見出している。この結果は,本研究で提案した近赤外発光アップコンバージョンナノ粒子に基づくセンサが溶液系ではあるが作動することを明確に示している。 以上の理由により,本研究は概ね当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
コアシェル型UCNPsをグリシジロキシプロピルトリメトキシシランで処理し,NaN3を用いてアジ基を導入後,クリック反応を用いて我々が開発したレセプター感受性近赤外吸収azaBODIPY色素を固定化する。調製した色素固定化UCNPsを,我々が開発したグルコースに対して高い認識能を有するビスベンゾボロキソール型レセプターを含むジメチルアクリルアミドやヒドロキシエチルメタクリレート等の親水性単官能モノマー溶液に分散させ熱重合し,色素固定化UCNPs包埋センシングフィルムを構築する。このセンサフィルムは,ポリマーに共重合したレセプターと固定化色素が錯体を形成することによりUCNPsがレセプターポリマーの架橋点となる。また,このセンサに半導体レーザー(波長980 nm)からの励起光を照射しても,UCNPs表面固定化色素錯体の吸収スペクトルがUCNPsの発光波長と重なることにより生じる共鳴エネルギー移動(LRET)によって,UCNPsからのNIR発光は弱い。グルコースが添加されると競争的錯形成反応及び架橋点減少に伴うポリマー膨潤により色素錯体が解離し,色素の吸収スペクトル変化によりLRETが解消し,NIR発光強度が増大する。UCNPsへの色素固定化量,ポリマー中のレセプター密度,単官能性モノマーの種類等について詳細に検討し,グルコースに対して可逆で最大のNIR発光応答を示すセンシングフィルムを開発する。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究計画では,金ナノ粒子固定化ハイドロゲルに包埋するためのコアシェル型UCNPs固定化用ビスベンゾボロキソール型グルコースレセプターの合成を予定していた。しかし,レセプター感受性NIR吸収色素固定化UCNPsが糖に対して優れたNIR発光応答を示したため,令和元年度はレセプター感受性色素の有機合成に注力した。さらに、レセプターの合成にはブチルリチウム等の不安定な試薬が必要であり,できるだけ新鮮な試薬を用いて合成を進めるために試薬発注を次年度に繰り越した。 令和二年度使用に繰り越した予算は,レセプター感受性NIR吸収色素固定化UCNPsを包埋するための,レセプター共重合ハイドロゲル合成のための試薬,溶媒,ガラス器具等の消耗品費として使用する。
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