2020 Fiscal Year Research-status Report
予備濃縮と電位差分析法によるマイクロ流路ペーパー分析デバイスの開発
Project/Area Number |
19K05549
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
正留 隆 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30190341)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロ流路ペーパー分析デバイス / オプトード / 予備濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,紙相に測定対象物質を予備濃縮した後, μPAD検出部のオプトードに溶出させ, 生じたオプトードの吸光度変化により定量する新規μPADを開発することを目的としている. 測定対象物質は陽イオン性界面活性剤であるゼフィラミン(Zephi)とした. オプトード膜液は著者らの方法{M. A. Ashagre, T. Masadome, Anal. Sci., 34, 195-199 (2018)}を用いて作製した. 作製したオプトード膜溶液を油性ペンで描いたろ紙(ADVANTEC 2)上の直径1cmの円内部に1滴滴下し, 5分間放置してろ紙上にオプトードを作製した. ろ紙へのZephiの予備濃縮の検討は以下のようにして行った. ろ紙を0.5 wt%水酸化ナトリウム含有アルギン酸ナトリウム(SA/NaOH)溶液に10分間浸すことで、ろ紙にSAを固定化した. このろ紙をZephi溶液10mLに浸しZephiを濾紙上に予備濃縮し,このろ紙3枚をオプトード膜に重ね,pH 4.0 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液10滴を滴下し2時間放置し,ろ紙上に予備濃縮されたZephiをオプトード膜に溶出させた.オプトード膜のRGB値とL*a*b*値およびΔEを算出しZephiに対する検量線を作成した. 0-20 x 10-5 Mの濃度範囲のZephiに対して, Zephi濃度の増加とともにΔE値は直線的に増加した.これはμPADによって0-20 x 10-5 Mの濃度範囲のZephiの定量が可能であることを意味している.予備濃縮した5.0 x 10-5 M Zephi溶液に対するΔE値を検量線から予備濃縮後の濃度に換算すると約18 x 10-5 Mとなった. このことより, 5.0 x 10-5 M Zephiは約3.6倍程度予備濃縮されていることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画ではμPADにおける検出部としてイオン選択性電極を用いる電位差分析法を用いる予定であったが、電位安定性に優れたイオン選択性電極と参照電極を作製することができなかった. そこで, μPADにおける検出部としてオプトードを用いる方法に切り替えたため, 進捗状況が遅れる結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では, SA/NaOHで修飾したろ紙で予備濃縮した後, μPADに組み込まれたオプトードに溶出させ, 生じたオプトードの吸光度変化により定量するμPADの開発を検討した.その結果,作製したμPADによってZephiを3.6倍程度予備濃縮して検出することができた.今後,μPADによるZephiの濃縮倍率に及ぼす紙材料の種類,試料溶液体積,予備濃縮時間,溶離液として作用する酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液濃度の影響を詳細に検討する予定である.
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Causes of Carryover |
7. 現在までの進捗状況で述べたように, 当初の計画からμPADにおける検出部としてオプトードを用いる方法に切り替えたため, 進捗状況が遅れる結果となった. そこで, 次年度にこの方法を詳しく検討するための予算を残しておくことが肝要と考えた。
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