2019 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素回収・有効利用・削減に向けた総合的プロセス実現のための材料開発
Project/Area Number |
19K05559
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
加納 博文 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60334166)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 環境負荷低減物質 / アルカリ金属炭酸塩 / 二酸化炭素回収 / ナノ構造化 / 異種原子置換 / コンポジット / 構造活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 湿潤下でのCO2回収材として有望なK2CO3やNa2CO3は理論上の回収量は多いが、反応速度が遅いとか再生温度が高いといった問題点がある。このような問題点を克服するために炭素とのコンポジットを調製したり、異種原子であるMgをドープしたりすることで構造の活性化を誘起し、CO2回収と再生において効率的なプロセスになることを確認した。本年度はK2CO3の炭素とのコンポジット化によりCO2回収反応速度の向上と再生温度の低下について検討した。その結果、コンポジットにすることで、反応速度の向上と再生温度の低下において有意な効果があることを認めた。また、炭素材とのコンポジット調製にテレフタル酸を用いてきたが、より安価なクエン酸を用いてもコンポジットが生成することを確認した。 2) 活性炭、窒素ドープカーボンナノチューブ及び鉄基板上に形成した窒素ドープ炭素薄膜を調製し、金属銅微粒子を電析した電極を作製した(それぞれ、AC-Cu, N-CNT-Cu, N-CF-Cu)。これら電極による炭酸水溶液におけるCO2電気化学還元反応について予備的に検討した。この中でN-CF-Cuは6時間の電気化学還元で、水溶液からは有機物の臭いがし、GC-MS分析により有機物の存在が確認された。しかし、再現性があまりよくなくなかったので、N-CF-Cuの調製法を基礎的に検討することとした。 3) 柔軟な構造を持つELMのうち、ELM-11, ELM-12及びELM-13を用い、純粋なN2とO2の吸収等温線を比較するとともに、乾燥空気(N2:O2=4:1)における選択的O2吸収について検討した。その結果、3つのELMは77 Kにおける単一の吸収等温線からは選択的O2吸収が起こる圧力範囲が確認された。しかし、N2圧力が高い乾燥空気の吸収等温線は複雑な挙動を示したので、さらなる詳細な解析が必要であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)については、以前の研究で、炭素とのコンポジット化により、安価なNa2CO3の問題点であったCO2回収反応速度の向上と、再生温度の低下について効果があった。今回K2CO3の場合にもその効果があるかを検討した結果、炭素とのコンポジット化により、固体結晶がナノ粒子化し構造活性化が誘起されるために、反応速度の向上や再生温度の低下といった効果が現れることが分かった。今後、異種原子の導入を併せて行うことでさらなる有意な効果が期待できる。今後のよい指針が得られた。 2)については、予備的な検討であるが、炭素材料の電極化と電気化学的CO2還元を進めることができたので、研究計画を順調に進めることができた。 3)について、いくつかの異なる温度で、3つのELMについて純粋なN2とO2の吸収等温線を測定し、基礎的データをまとめることができた。また、乾燥空気の吸収等温線の測定から、より複雑な等温線になることを確認し、今後の検討内容について指針を得ることができた。このように順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)については、さらに反応速度の向上と再生温度の低下を実現するために、Na2CO3に対して異種原子であるMgを導入し、これと炭素とのコンポジット化を進める計画である。したがって、炭素とのコンポジット調製法を詳細に検討する必要がある。 2)については、電気化学的CO2還元反応が効率的に進行する条件や再現性に乏しいため、多くの異なる電極や条件において、有効な電極や条件を確立し、再現性の良いデータを取得できるようにすることが重要である。スピードアップしてそのようなデータを取得するようにする。 3)については、異なる混合比のN2-O2ガスの吸収等温線を測定し解析することで、O2選択性について詳しく理解し、分子シミュレーション等を併用して、選択性の定量化と機構について迫る必要がある。
|
Causes of Carryover |
CO2回収や電気化学CO2還元反応の研究を進めるにあたって、発生する気体の分析を千葉大学共用機器センターの装置で行ってきたが、分析結果が十分でなかった。そこで分析メーカに相談して四重極質量分析装置を用いて行うことを検討した。その結果、一定の測定ができる見込みが出たので今年度予算と次年度の予算とを合わせて、四重極質量分析装置を購入することとした。そのため、今年度予算を使用せず次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(12 results)