2020 Fiscal Year Research-status Report
Environmentally Friendly Ionic Liquids and Labor-saving: Synthesis of Truxene-type Molecules on the Basis of Analysis of Reaction Mechanisms
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19K05564
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岡崎 隆男 三重大学, 工学研究科, 教授 (90301241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 敏一 三重大学, 工学研究科, 教授 (20183791)
平井 克幸 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 准教授 (80208793)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イオン液体 / トルキセン / アルドール環化三量化 / 多環芳香族炭化水素 / グリーンケミストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
化学物質による環境負荷の低減のため、次世代の有機合成では、大気汚染に繋がる揮発性有機溶媒から、環境にやさしい反応溶媒へ転換することが望まれる。イオン液体は、不揮発性であるため、大気を汚染することが無く、グリーンケミストリーの環境にやさしい溶媒として注目されている。また、有機合成においてイオン液体を溶媒として用いると、抽出のみで生成物を得ることができるため、従来の反応に比べて有機溶媒の使用量を減らせる。また、イオン液体は再利用できる。しかし、イオン液体中で複雑な構造の多環式芳香族化合物の合成へ展開できるのか、わかっていない。一方、アルドール縮合による環化は種々の新しい多環式芳香族化合物の合成法として注目されている。本研究では、従来不可能であったイオン液体中で異なるユニットをもつトルキセン型多環式化合物の合成に挑戦する。そして、イオン液体を用いる省力化プロトコルを確立し、有機溶媒使用量を削減する。 本年度までの研究において、イオン液体[BMIM][Tf2N]中で、p-TsOH存在下、1-インダノンの二量体である2-(1-インダニリデン)-1-インダノンと5位置換アセナフテノンまたは、アセトフェノンを加熱して、縮合環化生成物を調べた。生成物としてアルドール縮合環化による新規多環芳香族炭化水素とアルドール環化三量体が生成した。また、2-アセチルフルオレンおよび、5-アセチルアセナフテンをp-TsOH存在下、イオン液体中で加熱したところ、アルドール環化三量化により、それぞれ、新規多環芳香族炭化水素が生成した。生成物も抽出のみで分離でき、合成の省力化が達成できた。さらに、ベタインのソルバトクロミズムにより、イオン液体[BMIM][Tf2N]の溶媒効果は、EtOHに近いとわかった。イオン液体は、今後、多くの機能性分子の環境にやさしい合成を飛躍的に発展させる可能性があると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気を汚染しないイオン液体中で、複雑な構造を持つ新規なトルキセン型化合物の合成において、概ね順調に進展している。文献の方法に従って、イオン液体の合成を合成した。アルドール環化反応前駆体として、アルドール縮合による二量体である置換基を導入した2-(1-インダニリデン)-1-インダノンと種々の5位置換1-アセナフテノンと5位置換1-インダノン合成した。これらの二量体と環状ケトンまたは、市販の環状ケトンを用いて、イオン液体中におけるアルドール環化による新規多環芳香族炭化水素であるベンゾトルキセン型化合物を合成できた。また、2-アセチルフルオレンおよび、5-アセチルアセナフテンをp-TsOH存在下、イオン液体中で加熱したところ、アルドール環化三量化により、新規多環芳香族炭化水素が生成した。生成物も抽出のみで分離でき、合成の省力化が達成できた。1-メチルピリジニウムとフェノラートがアセチレンで連結したベタインのソルバトクロミズムにより、イオン液体[BMIM][Tf2N]の溶媒効果は、EtOHに近いとわかった。 さらに、DFT (Density Functional Theory) 計算によって、アルドール縮合環化の前駆体に置換基が導入されると、電子吸引性基と電子供与性基はともに反応活性化エネルギーを上昇させることがわかった。これらの結果に基づいて、今後、さらに、前駆体を合成して、イオン液体を用いて合成できる応用例を開発中である。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体を用いた複雑な構造を持つ新規なベンゾトルキセン型化合物の合成のために、前駆体ユニットである種々のベンゾ置換1-アセナフテノンと5位置換1-インダノンを合成する。二量体として置換基を導入した2-(1-インダニリデン)-1-インダノン誘導体を合成する。これらを用いて、イオン液体[BMIM][BF4]と[BMIM][Tf2N]中で、二量体とのアルドール縮合環化により、新規ベンゾトルキセンを合成する。さらに、新規ベンゾトルキセンの機能について、環化還元電位や紫外可視光吸収、発光について調べる。環境にやさしい無溶媒反応とイオン液体中との反応を比較する。 DFT (Density Functional Theory) 計算の結果とともに、これらの機能物性測定結果を解析する。以上の得られた結果に基づいて、イオン液体を用いた高収率な環境にやさしい簡単・省力化合成プロトコルを確立する。複雑な多環式芳香族化合物への応用と有機溶媒の削減量を評価し、研究の総括を行う。
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Research Products
(5 results)