2020 Fiscal Year Research-status Report
The development of novel one-pot synthetic methods for heterocyclic compounds using the magnetic core/shell particles
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19K05570
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 賢一 日本大学, 理工学部, 准教授 (10373002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 哲也 日本大学, 理工学部, 准教授 (00307802)
青山 忠 日本大学, 理工学部, 教授 (90349960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コアシェル型磁性体 / 固体酸 / 塩基性高分子 / 触媒再生 / 触媒再利用 / イソオキサゾール誘導体 / チオフェン誘導体 / フラン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究を通して本年度得られた成果としては,1)磁性体として安価に市販されている四酸化三鉄をコア(中心核)に,また二酸化ケイ素をシェル(中心核を取り巻く殻)としたコアシェル型磁性体の合成,2)1で合成したコアシェル型磁性体を原料にした酸触媒としての核となるスルホ基をシラノール基に導入したスルホ化コアシェル型磁性体の合成,3)2で合成した酸性磁性体を触媒として用いた,有用複素環化合物であるイソオキサゾール誘導体の合成を通した磁性体触媒の性能確認,が挙げられる。本研究は酸性コアシェル型磁性体の合成と,合成した酸性磁性体及び塩基性高分子を利用する同一反応容器内に酸・塩基を共存させた不均一系ワンポット反応を構築して有用複素環化合物の簡便な合成法を開発するものであり,本年度の成果は前者の目的を達成したものである(後者の一部は前年度に達成済)。本合成法は不均一系反応(反応基質は溶媒に溶解し,触媒は溶解せずに反応容器内に存在している状態)であるため生成物と触媒の分離はろ過等で容易に行うことができ,酸と塩基の触媒同士の分離は一方が磁力に引き寄せられる性質をもち(この場合は酸),またそれを利用することによりこちらも容易に行うことが可能である。さらに,両触媒はそれぞれ安価なアンモニア水,または希塩酸で処理することでそれぞれが有する官能基を元の状態に簡単に戻すことができ,再度反応に利用することが可能なことから本法の開発は環境調和型化学プロセスの新規開発における選択肢のひとつになる,と考えられる。先に示した成果のうちスルホ基を有する磁性体触媒の利用は,安価であること,またその回収と塩酸等による再生の容易性によって化学工業分野における重要な反応及び物質生産への応用が十分に可能である点からも,今後の利用展開が大いに期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は,コアシェル型酸性磁性体及び塩基性高分子を利用してそれらを同一反応容器内に共存させた有用複素環化合物の酸・塩基共存不均一系ワンポット合成法の開発である。先の交付申請書で示した実施計画に基づき,これまでに行った研究を次に示す。1)本研究費を用いた装置等の購入・配備を含めた研究体制の構築。2)目標とする有用複素環化合物の選抜とそれに関係する反応中間体及び最終生成物の合成,また各化合物のガスクロマトグラフィーを使用した内部標準物質を用いた検量線の作成。3)塩基触媒として利用する塩基性高分子の選抜と,それを用いた各反応中間体の合成,反応後の回収方法や再生・再利用の検討。また本年度においては,4)安価で利用可能な磁性体である酸化鉄(Strem Chemicals 社製酸化鉄(Ⅱ,Ⅲ),Magneti磁鉄鉱 95%)とオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いた各種条件下でのコアシェル型磁性体 Fe2O4@SiO2 の合成,5)Fe2O4@SiO2 とクロロスルホン酸を用いた各種条件下でシラノール基がスルホ化された酸性コアシェル型磁性体 Fe2O4@SiO2-SO3H の合成,6)Fe2O4@SiO2-SO3H の活性試験として,それを酸触媒として用いたα-ニトロケトンとアルケンからの3-アシルイソオキサゾール誘導体の合成,の各種の検討を行った。実験の結果,イソオキサゾール誘導体が得られたことから酸触媒としての活性が認められ,またこれより目的の酸性磁性体触媒の合成ができたことを確認した。ただし本年度起こった新型感染症への対策のため,本研究を推進するための物理的な時間が昨年度と比較して減少しており,現状定性的な実験結果しか得られていない状態である。これより触媒開発はまだ継続中なので研究の進捗状況としては,「やや遅れている」と判断せざる負えない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
始めに,進捗状況に示した現在継続中の研究である,酸性磁性体触媒の合成法を最適化してそれを確定させる。具体的には,本触媒は Naeimi らが報告した文献を基にその合成を行っており,現在までに2段階ある反応のうち1段階目の Fe2O4@SiO2 の合成における反応条件の最適化は終了したが,2段階目であるクロロ硫酸を用いた触媒のスルホ化における各物質の使用量や反応時間,磁性体を取り扱うための使用器具の工夫等の条件検討が必要であるので,これを継続して前述の目標を達成する。次に,本触媒の活性試験では前述イソオキサゾール誘導体の合成を利用しているが,この複素環化合物も有機合成化学分野では非常に有用性の高い物質である(有用な反応中間体であり,また薬理活性が期待できる化合物群である)ので,本試験を通して触媒の有用性を伝えるとともに,本化合物の定量的な合成研究を実施する。最後に,この研究を通して触媒性能の評価を行った後,塩基性高分子及び合成した酸性コアシェル型磁性体触媒を同一系内に入れ,目的の複素環化合物である,チオフェン及びフラン誘導体のワンポット合成実験を実施する。本実験では反応後の触媒の分離(ろ別を予定)及び磁性を利用する触媒間の分離(ネオジム磁石の利用を予定),両触媒の再生(塩基性触媒はアンモニア水で,酸性触媒は塩酸で再生を予定),再生した触媒を用いた再利用実験(分離再生再利用した触媒の使用限界の検討を含め)を行い,出発原料の構造を変化させた場合の汎用性等についても検討する。以上の研究を通して得られたデータは各研究でまとめて論文にし,これらを総合して本研究課題の完遂を目指す。
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Research Products
(2 results)