2019 Fiscal Year Research-status Report
ホルムアミド保護シングルナノ金属微粒子触媒による高度分子変換法の探求
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19K05573
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大洞 康嗣 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50312418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ粒子触媒 / ホルムアミド / シングルナノサイズ / 環境調和型触媒プロセス / フィードストック |
Outline of Annual Research Achievements |
シングルナノ金属微粒子の高難度有機変換反応への利用は、高騰を続けるレアメタル資源を有効利用するための技術開発において極めて有効である。本研究では簡便に金属を超微粒子化させる技術を提案するとともに、金属が有する表面を最大限に生かして従来にはない超高活性な触媒としての機能を発現するという革新的な原理を創出することを目的とする。 本目的を達成するために、担体ならびにイオン性保護剤を一切用いることなく触媒活性を維持したままナノ粒子に対して適切な配位力を有する、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を還元剤、保護剤、溶媒として用いたナノ金属粒子の合成を行い触媒機能評価を行う。 2019年度は、酢酸パラジウムを前駆体として用い、DMF中140℃で10時間攪拌を行う方法によりパラジウムナノ粒子の合成を行った。STEM観察により粒子径が3~5ナノメートルのナノ粒子が得られていることを確認した。また、FT-IR測定により、アミド基由来のC=O伸縮振動ピークが観測され、DMFがパラジウムナノ粒子に配位していることを明らかにした。また、XPS測定によるナノ粒子中のパラジウムの電子状態を観察した結果、ナノ粒子化により酢酸パラジウムが部分還元されていることがわかった。 続いて、得られた酢酸パラジウムを原料として合成したパラジウムナノ粒子を触媒として用いた鈴木-宮浦カップリング反応の検討を行った。結果、本触媒は極めて高い活性を示すことを見出し、触媒回転数は10万回以上の値を示した。さらに本触媒系は電子吸引基および電子供与基を有する種々の置換基を有する反応基質を用いた反応に適用可能であり、対応するクロスカップリング生成物が80%以上の高収率で得られた。さらに、本系では従来に比べて触媒量の大幅な低減化(0.0004 mol%)に成功するとともに、最大5回までの触媒リサイクルにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遷移金属触媒を用いるフィードストックを用いた超高活性分子変換技術は、グリーンケミストリーの推進にとって欠かせない技術であり、医薬・液晶などの産業応用に有用な有機化合物や材料合成に広汎に用いられている。しかしながら、現在の触媒合成プロセスはパラジウム、白金、イリジウムなどの希少貴金属資源の使用に大きく依存している。そのため大量消費されるレアメタルの極限までの低減化および代替化等、金属資源の高度利用のための技術開発は、緊急課題である。遷移金属のシングルナノ粒子化は、クラスターの表面積が向上するため高活性触媒としての利用が期待され、これまでにクラスター表面で起こる化学反応が極めて効率的に進行することが発見されており、触媒低減化プロセス技術開発において大きな注目を集めている。 2019年度は、ナノ微粒子の合成条件(加熱方法、金属対イオン、溶媒)をスクリーニングし、サイズの揃ったシングルナノ金属微粒子の合成法の確立を目指すことを課題として研究を進めた。結果、パラジウム前駆体として酢酸パラジウムを選択してナノ粒子化することにより、従来の塩化パラジウムを反応前駆体とすることにより得られたナノ粒子とは異なる優れた触媒活性を示すことを見出した。具体的には、鈴木ー宮浦クロスカップリング反応において、10万回以上という従来系では達成できなかった触媒活性を本触媒系で達成することに成功した。 さらに、本研究にて合成した酢酸パラジウムを前駆体として得たナノ粒子は、高い触媒リサイクル性を有することを見出し、複数回の再利用においても触媒活性の著しい低下は見られないという結果も得られた。したがって、本年度はパラジウム前駆体を変えることにより、得られたナノ粒子触媒活性を著しく向上させることが可能であるという当初の計画では想定しなかった有益な知見ならびに研究の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究では、パラジウム前駆体を変えることにより、異なる粒子サイズおよび金属上の電子状態を有するパラジウムナノ粒子が得られることを明らかにした。また、この違いが、クロスカップ反応における触媒活性に大きく影響を及ぼし、高活性パラジウムナノ粒子を開発するための触媒機能評価において多くの知見が得られ研究が進展した。この結果は、パラジウムナノ粒子の合成において、パラジウム前駆体上の置換基や配位子等の外部添加剤が、ナノ粒子の構造や触媒機能に影響を及ぼし、ナノ粒子合成条件のさらなる検討によって触媒活性を著しく向上させる効果を発現することが期待できる。 2020年度の研究においては、パラジウムナノ粒子に外部配位子を添加することによって有機変換反応における触媒活性の向上を目指すとともに、イリジウムやルテニウム等の他の金属を用いて合成した金属ナノ粒子を触媒とした高難度有機変換反応への展開を図る。 具体的には、シングルナノ金属微粒子触媒を用いて、脂肪族アルコールを用いたβ位二量化によるゲルべアルコールの高収率かつ高化学選択的な合成を行う。さらにアルコールをアルキル化剤としたアセトアミドやニトリル類を用いたα-アルキル化における触媒機能評価を行うとともに、従来水素移動能が低いエタノールの反応性の向上を図り、接触増炭反応プロセスにおける本ナノ触媒系の有効性を実証する。すなわち、アルコールやフィードストックからの環境調和型触媒反応に適用し、金属微粒子の触媒特性(収率、選択性、触媒回転数、反応基質適用範囲)を評価する。同時にまた、触媒反応において用いた金属微粒子については水中で分散させ、抽出操作を用いて水層から金属ナノ粒子を回収することにより、触媒再利用(リサイクル)を行う。このように、今後はシングルサイズナノ金属微粒子を用いた環境調和型触媒プロセスの達成を目的とした研究を推進する。
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Research Products
(4 results)