2020 Fiscal Year Research-status Report
ホルムアミド保護シングルナノ金属微粒子触媒による高度分子変換法の探求
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19K05573
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大洞 康嗣 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50312418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ粒子触媒 / ホルムアミド / シングルナノサイズ / 環境調和型触媒プロセス / フィードストック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前駆体金属イオンを汎用溶媒中で加熱撹拌するのみという極めて簡便な方法によって高活性金属として魅力的かつ潜在的な可能性を有するシングルナノ金属微粒子を合成する斬新な手法を提供することを目的とする。加えて、これらシングルナノ金属微粒子を触媒とした高難度有機変換反応への利用を図り、単官能基フィードストックからの「一段反応」によって工業的に需要の高い、マスケミカルズおよびファインケミカルズを得るための実用的かつ新規な合成手法を提供することも研究目的としている。 本目的を達成するために、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を還元剤、保護剤、溶媒として用いたナノ金属粒子触媒の合成を行い触媒機能評価を行った。 2020年度は、以下に示す2つの成果を得た。 第一に、塩化イリジウムを前駆体として得られるイリジウムナノ粒子を触媒とした脂肪族アルコール類とベンジルアルコール類のクロスアルキル化反応の検討を行った。結果、種々の反応基質を用いた交差アルキル化生成物が高収率かつ高選択的に得られた。また本ナノ粒子触媒は、濾過と減圧蒸留のみで回収再利用可能であることが分かった。 第二に、 DMF保護法により合成したパラジウムナノ粒子触媒が種々のアルコールを用いたエーテル交換反応に活性を示すことを見出した。具体的には、アルコール類とブチルビニルエーテルをパラジウムナノ粒子触媒を加えて反応させることにより、対応するビニル交換生成物が高収率で得られた。本反応においては、少量の酢酸銅とバトフェナントロリンを共触媒として加えることにより高収率で目的生成物が得られることが分かった。 また、反応前後のパラジウムナノ粒子の粒子径に関して透過型電子顕微鏡ならびに動的光散乱法(DLS)を用いた測定を用いた評価を行うとともに、触媒のリサイクル化の試みに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度までの研究において、DMF保護パラジウムおよびイリジウム金属ナノ粒子の液相合成ならびに、これらを触媒を用いたアルコールを反応基質として用いたC-C結合形成を伴うアルキル化反応およびビニル交換反応を達成した。本金属ナノ粒子触媒系を用いた反応においては、種々の電子求引基や電子供与基を持つアルコール, 脂肪族アルコールなど様々な基質に適用することが可能であり、基質拡張性の極めて高い有用な有機合成手法を提供することができた。これらの反応の成功は有機化学、薬学、生化学などの分野において重要な化学変換プロセスの提供に寄与し、本研究は当初の計画以上に進展している。 また、本研究では機器分析による金属ナノ粒子触媒の解析も行い、透過型電子顕微鏡および動的光散乱法を用いた測定において、反応前後において同様な粒子径を維持していることが確認され、回収リサイクル可能な触媒として用いることができることを実証した。また、ビニル交換反応においては、添加剤であるバトフェナントロリンと酢酸銅(Ⅱ)を加えずに反応を行うとパラジウムナノ粒子が数百nm程度のサイズまで凝集することを確認した。 この結果は、パラジウムナノ粒子触媒に適切な添加剤を加えることにより、触媒反応中におけるナノ粒子の凝集を防ぎ、 粒子径を維持する効果を示すことができることを明らかにした。 また、触媒リサイクルの方法についても種々の検討の結果、反応後の溶液にヘキサンと DMFを加えた抽出分離の方法によって、ヘキサン層に未反応の原料や生成物を抽出し、DMF層に分散性の高い金属ナノ粒子を効率的に分離することができることが分かった。さらに、触媒を分取するための抽出溶媒として用いたDMFを留去した後に、新たに基質と添加剤を加え反応させることで、収率を大きく低下させることなく複数回のリサイクルに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究では、パラジウムおよびイリジウムナノ粒子触媒によるアルコールを原料とした有用な有機変換反応を見出した。また、適切な添加物をパラジウムナノ粒子に加えることにより、触媒反応における金属ナノ粒子の凝集を防ぐことを見出し、本触媒系がリサイクル可能な触媒としての展開を果たした。 今後は、ルテニウム、コバルト等の他の汎用金属前駆体を用いたDMF保護金属ナノ粒子の合成を行い、アルコールならびにアルケンなどのフィードストックを用いた高難度触媒反応を実施する。また、本ナノ粒子触媒系によるジオールを用いたアルキル化反応を行い、モノヒドロキシアルキル化反応物を高選択的に得るための触媒反応条件のスクリーニングを行い、本触媒系の更なる有機変換反応への適用を図る。さらに、得られた金属ナノ粒子の中心金属の組成、表面状態、ならびに保護分子に関する構造解析を行うことにより、有機合成反応における触媒活性化評価を見積もる。加えて、触媒反応前後における、金属ナノ粒子触媒の表面や内部の酸化状態や添加物のナノ粒子に与える効果について、X線光電子分光、X線回折法、透過型電子顕微鏡および動的光散乱法等を用いた機器分析解析を行い、ナノ粒子の構造が触媒機能に影響を及ぼす要因に関する更なる評価を行う。また、有機合成反応における触媒活性スクリーニングの検討と組み合わせることによって、本系での触媒活性の更なる向上を目指す。同時にまた、抽出操作を用いて触媒を分離した溶液の誘導結合プラズマ発光分光分析による分析を行うことによって、シングルナノサイズ金属粒子を効率的に分離する触媒リサイクル法の更なる改良を行い、本手法を用いた境調和型触媒プロセスの達成を目的とした研究を推進する。
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Research Products
(2 results)