2019 Fiscal Year Research-status Report
1分子のラセミ乳酸を含むモノマーの設計と立体選択的重合による結晶性ポリ乳酸の合成
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19K05579
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野村 信嘉 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70291408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 理貴 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20376940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリ乳酸 / 乳酸 / 開環重合 / イソタクチック / 融点 / ラセミ / グリセロール / 資源循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずラセミ乳酸とカルボニル化合物とを酸性条件下、脱水反応することで、乳酸単量体由来の5種類のモノマーを合成した。5-メチル-1,3-ジオキソラン-4-オン (MDO)を基本骨格として、ジメチル基が置換した2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキソラン-4-オン (Me2MDO)、ジエチル基が置換した2,2-ジエチル-5-メチル-1,3-ジオキソラン-4-オン (Et2MDO)、モノフェニル基が置換した5-メチル-2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-オン (PhMDO)、さらにオキソ基が置換した5-メチル-1,3-ジオキソラン-2,4-ジオン (oxoMDO)を合成し、これら5種類のモノマーに対してサレン型アルミニウム単核錯体あるいはサレン型アルミニウム二核錯体、ビス(サリチルアルドイミナト)アルミニウム錯体とEtAl(OR)2混合錯体を用いた重合を検討し、モノマーの合成方法、反応剤、生成モノマーの安定性、およびモノマーの重合性について詳しく調べた。 モノマー合成では、MDOの精製は困難で、トリオキサンの混入が避けられなかった。ラセミ乳酸とアセトンとの脱水縮合により生成するMe2MDOが合成や生成が容易であった。Et2MDOはジエチルケトンがアセトンに比べて高価であること、また重合活性が低いことが分かった。PhMDOは、反応性が低く、またジアステレオマーの混合物となり、立体選択性の検討には問題が多かった。また、oxoMDOの合成には、ホスゲン化合物が必要で有り、さらにモノマーとしての安定性が低く、サレン型アルミニウム触媒では重合が確認出来なかった。以上のことから、Me2MDOをモノマーとして立体選択的重合を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの脱離カルボニル化合を有する化合物を合成し、重合を検討した。この中から、安価な試薬で効率的に合成でき、また取り扱い容易なモノマーとして、Me2MDOを見出した。 salen型アルミニウム触媒を用いて重合を検討したところ、イソタクチック選択性が確認された。得られたポリ乳酸を精製し、DSC測定したところ融点は~150度Cを示した。先の我々の研究から、この融点はラセミラクチドから得られるPm = 0.82程度のイソタクチックポリ(ラセミラクチド)と同程度の融点を示した。今回の重合系では、ラクチド(乳酸2分子)の半分(乳酸1分子)の繰り返し単位であることから、イソタクチック選択性Pm = 0.91と見積もられた。 得られたポリマーのメチル基を照射し、メチン領域のシグナルの強度比から、Pm = 0.90と見積もられ、先のポリ(ラセミラクチド)の融点から算出されたPm = 0.91と良い一致を示したことから、選択性の算出方法は信頼出来ることが裏付けられた。 また、salen型アルミニウム触媒の置換基効果について詳細に検討し、立体選択性および重合活性などから、無置換のトリメチレンバックボーンを有するhomosalenアルミニウム触媒、あるいはPh基を置換基に有するhomosalenアルミニウム触媒が優れていることを見出し、当初考えていた研究が概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Me2MDOをモノマーとすると、脱離するアセトンの脱離性が比較的低いため、これまでバルク重合で重合温度110度Cで検討してきた。しかしモノマーの沸点がそれほど高くないことに加え、100度Cでは1気圧下ではアセトンが沸点に達する温度であるため、密閉した真空状態の重合容器を使って検討してきた。今後は、より実用的かつ安全の高い重合系を目指して、簡便な重合系の確立を目指す。具体的には、溶液重合での検討や、冷却水を使った環流条件下での重合を検討する。 これまでのところ、立体制御には成功しているものの、分子量や分子量分布の制御ができておらず、精密重合とは言い難い状況である。モノマーの重合性を高め、より最適な重合条件や重合触媒を目指して検討する。 また、反応性を高めることを目指し、脱離アセトンのメチル基に電子吸引性の置換基を導入し、重合活性のより高いモノマーの開発を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当該年度の所要額の1%未満で有り、概ね予定通り使用した。ただ、新型コロナウイルスの感染広がりにより、3月上旬から実験を進められなくなったことも、残金が出た理由の一つである。
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Research Products
(10 results)