2020 Fiscal Year Research-status Report
1分子のラセミ乳酸を含むモノマーの設計と立体選択的重合による結晶性ポリ乳酸の合成
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19K05579
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野村 信嘉 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70291408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 理貴 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20376940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリ乳酸 / 立体選択的重合 / イソタクチック / 開環重合 / 脱離 / 融点 / 触媒 / ラセミ乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでは、密閉した真空条件の反応容器内で、Me2MDOをモノマーとしたサレン-アルミニウム触媒を用い、工業的に最も適している塊状重合(100度C)を行い、立体選択的な脱離を伴う開館重合を検討してきた。これはモノマーの沸点が低く揮発性が高いため、モノマーの揮発を避けるために密閉が必要であり、反応系が小さく脱離するアセトンが気体となるため重合開始時は真空条件とし、モノマーの重合性が低いと考えられたため、高温の100度Cで重合を検討する必要があったからである。。 より実用的な重合反応系とするため、風船による圧力調整をした常圧下での反応系を用いて重合を検討することにした。これまで、モノマー転化率が50-60%で頭打ちとなっていた。これは脱離化合物であるアセトンが条件下で気化し、反応系の圧が高くなることにより、開環重合の平衡状態に達してしまうためだと考えられた。実際に、反応スケールはそのままで、反応容器の体積を大きくすることでモノマー転化率は上昇することを確認した。そこで常圧下の100度Cで塊状重合したところ、より高いモノマー転化率を達成する事が出来た。 触媒の置換基について綿密に検討し、常圧下での立体選択性を確認したところ、iPr置換基を有する触媒がわずかに高い立体選択性を示した。生成したポリ(ラセミ乳酸)の融点を調べると、触媒の種類や重合条件にもよるが、最高で156度Cを示し、結晶性のポリ(ラセミ乳酸)を得ることが出来た。得られたポリマーのMALDI-TOF MS分析では、ポリマーのくり返し単位が72.06と、乳酸の分子量 - 水の分子量と一致し、ポリマーの分子量は開始末端として加えたPhCH2OHから重合が開始したポリ(ラセミ乳酸)の分子量と一致したことから、アセトンが完全に脱離して重合していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染拡大により、大学で研究のできない期間が3ヶ月ほどあった。これにより大幅な研究の遅れが予想されたものの、研究室の閉鎖が解除された後の努力で、かなりの進展が見られ、やや遅れている程度まで進めることが出来た。より効率的に研究を進めるため、支出が予想より増えたため、年度の予算をほぼ使い切った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで触媒は、サレン型触媒配位子とトリエチルアルミニウム(Et3Al)を1:1で混合して調製してきた。今後は、配位子に対して2当量のEt3Alを添加することによって生成するサレン-2核Al錯体を用いて重合および立体選択性を検討する。また、一定の触媒量に対して開始末端となるアルコールの量を変化させ、イモータル重合性を示すか調べると共に、アルコール添加量による立体選択性への影響を検討する。 これまでの検討を通して、脱離化合物がアセトンとなるMe2MDOがモノマー合成方法や精製方法の観点から、検討した実験では最も重合モノマーと適していた。そこで同じモノマーを用い、ジイミナート-Zn錯体を用い、シンジオタクチック選択的重合が可能か検討する。ジイミナート-Zn錯体は成長末端鎖制御により、ラセミラクチドをヘテロタクチック選択的に重合することが知られており、ポリマー成長末端の不斉炭素と逆の立体化学のモノマーと選択的に反応する。そこでこの触媒でMe2MDOを重合出来れば、シンジオタクチックポリ乳酸を合成できる可能性がある。これまで開環重合によりイソタクチックポリ(ラセミ乳酸)とシンジオタクチックポリ乳酸を合成するには、meso-モノマーを用い、光学活性触媒を選択して重合する必要があったが、Me2MDOに対して、触媒にホモサレン-アルミニウム触媒か、ジイミナート-亜鉛触媒かを選択するだけで、イソタクチックポリ(ラセミ乳酸)とシンジオタクチックポリ乳酸をつくり分けることが出来るようになり、極めて有用な重合系であることを示すことが出来る。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大により、3ヶ月ほど研究室が閉鎖されたことが主な要因である。研究代表者側は、約3ヶ月の実験室閉鎖をしたものの、研究再開後に研究を進めるために利便性を高めるために支出が増え、年度の研究費執行をほぼ終えた。 一方で、共同研究者は東京におり、感染拡大が危機的状況であったため、研究出来ない期間がさらに長く、研究開始後も制約が多かったことから、残予算が生じた。
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