2019 Fiscal Year Research-status Report
イソシアニドと不法飽和炭化水素の環化共重合反応を基盤とした新規重合反応の開拓
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19K05582
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神林 直哉 大阪大学, 理学研究科, 助教 (50706752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イソシアニド / リビング重合 / 環化共重合 / アレン / パラジウム / 配位重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属錯体の代表的な配位子の一つであるイソシアニドは、比較的容易に金属―炭素結合間に連続挿入し高重合体を与えることが知られており、現在までに多様な構造及び物性を有するポリイソシアニドが合成されている。しかし、それらはイソシアニド単独の重合に限られ、多種モノマーとの共重合反応は未開拓の研究領域である。当研究室では以前に、オルト位にアレニル基を有するアリールイソシアニドをモノマーとした環化共重合反応により、主鎖にキノリレン-2,3-メチレン骨格を有する新しい高分子の合成に成功している。一方で、成長末端パラジウム錯体の反応性が非常に高く、成長反応を制御できないことが問題であった。本年度は、これらの反応の制御を目指してパラジウム錯体の配位子を種々検討したところ。適切な二座配位子を用いた場合、分子量分布の狭い目的とする高分子が得られることを見出した。更にこの反応系では、開始剤であるパラジウム錯体とモノマーの仕込み比によって分子量を直線的に制御することができた。また、重合後の成長末端にキノリルメチルパラジウム錯体の存在が確認でき、重合後に再度モノマーを添加した場合も、狭い分子量分布を維持したまま分子量が増加した。以上の実験からこの反応がリビング重合性を有していることがわかった。反応解析の結果、本重合系では二座配位子の種類によって成長末端の反応性を制御することができ、リビング重合系の達成には配位子を適切に選択することが重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が以前に報告している、イソシアニドとアレンの環化共重合反応の反応機構及び各種条件検討を行うことで、反応活性種の制御に基づくリビング重合を実現することができた。これらの成果によって、ポリ(キノリレン-2,3-メチレン)を用いた新しい高分子設計が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた知見を基に、末端の活性な金属錯体を利用した、末端官能基変換やブロック共重合反応への展開を行う。また、萌芽的な知見として得られたポリ(キノリレン-2,3-メチレン)は側鎖置換基によって特徴的な二次構造を形成することが明らかとなっている。今後、これの構造解析を行うと同時に、機能性高分子への展開を模索する。
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Causes of Carryover |
初年度は、他の研究課題からガラス器具等の消耗品を流用することができ、出費を抑えることができた。来年度は、器具の老朽化に伴う出費が予想されるため、それらの購入に繰り越し金を使う予定である。
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