2021 Fiscal Year Research-status Report
イソシアニドと不法飽和炭化水素の環化共重合反応を基盤とした新規重合反応の開拓
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19K05582
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神林 直哉 大阪大学, 理学研究科, 助教 (50706752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イソシアニド / アレン / らせん / 環化共重合反応 / πスタック / リビング重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、開発したオルトアレニルイソシアニドのリビング環化共重合反応で得られる、ポリ(キノリレン-2,3-メチレン)を基盤とした新しい機能発現を目指して研究に取り組んだ。昨年度までに我々は、ポリ(キノリレン-2,3-メチレン)の側鎖置換基にアラニン 誘導体を導入した場合、側鎖間の水素結合により主鎖のキノリン間がらせん状にπスタックした二次構造を形成することを見出している。本年度は、πスタック型らせん高分子の機能化を目指し、側鎖のアミノ酸上の置換基がスタック構造の安定化及び重合挙動に与える影響について調査した。様々なアミノ酸誘導体を持つモノマーを合成して重合させ、得られた高分子の各種スペクトルを測定した結果、得られたπスタック型らせん高分子の安定性はアミノ酸置換基の形状に大きく依存し、特に嵩高いシクロヘキシルアラニンを側鎖置換基として持つ場合には、温度や極性溶媒(ジメチルスルホキシドなど)に対して高い安定性を示した。更に、これらの安定性の違いが重合挙動に与える影響について詳細に調べたところ、安定なπスタック構造を形成するシクロヘキシルアラニン、ロイシン誘導体を側鎖に持つ場合、重合初期に主鎖が絡まった準安定状態を形成し、その後不可逆な構造変化を経て、熱力学的に安定な核となるらせん状のπスタック構造を形成後、重合の進行とともにらせん構造が伸長することを明らかにした。一方、これらの重合挙動は、πスタック構造を安定に形成しないアラニン誘導体の場合は観測されなかったことから、側鎖のアミノ酸置換基が熱力学的に最も安定な構造を決定していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度報告している、πスタックらせん高分子の安定性について明らかにすることができた。また、当初予想していなかったらせんの形成挙動について明らかにすることも成功した。これら研究成果は、当初の研究方針である反応開発に基づく機能性高分子の開発に沿った成果であることから、研究はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究で、新しく合成したπスタックらせん高分子の土台としての性質について明らかにすることができた。今後は、高分子の末端官能基化や、側鎖置換基の調整など、一次構造設計法の開発を行うと同時に、πスタックらせん高分子の機能化について取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度も、多くの学会等がリモートとなり、交通費に当てていた予算が必要なくなったため。
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Research Products
(13 results)