2020 Fiscal Year Research-status Report
多様な点突然変異に対応する人工核酸の設計と難治性がん治療への応用
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19K05584
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫻井 敏彦 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (10332868)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペプチド核酸 / ヒポキサンチン / KRAS遺伝子変異 / 一塩基多型 / 相補鎖形成挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
InosineはD-リボースとHypoxanthine (Hyp) からなるヌクレオシドで, Guanine(G)以外のCytosine(C), Adenine(A), Thymine(T)と塩基対を形成する“ゆらぎ塩基”として作用する. つまり, Gを除く塩基を網羅的に検出できる機能性官能基として, 一塩基多型(SNP)を原因とする疾患(例えばKRAS遺伝子一塩基変異群)などのプロービングや遺伝子治療薬への展開が可能となる.前述のKRAS遺伝子一塩基変異群の網羅的な検出を目的として, これまでにペプチド核酸 (Peptide Nucleic Acid; PNA) の側鎖に,Hyp基の6位をベンジル基で保護したPNAモノマー(Fmoc-Hyp(OBn)-OH)を合成したが収率は低い(22.8%)ことが問題となっていた. これらの問題点を踏まえ,本年度ではPNAモノマー(Fmoc-Hyp(OBn)-OH)の高収率合成法を確立し,このモノマーを用いた複数のoligoPNA(Hyp)ならびにInchworm型PNA-Polyethylene glycol (PEG) コンジュゲート(i-PPc(Hyp))を合成した.oligoPNA(Hyp)と合成DNAとの相補鎖形成挙動を解析した結果,Gを除く他の塩基(A, T, C)に対してより安定に相補鎖を形成することが示された.これらの結果は,i-PPc(Hyp)により塩基配列依存的なプロービングの可能性を示している.また,細胞内輸送経路の特定を念頭に蛍光官能基(SRB)で修飾したi-PPc(Hyp)を合成し,細胞内への輸送経路を検討した結果,細胞内にマクロピノサイトーシス経路で取り込まれることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では,Hypを側鎖に持つペプチド核酸を合成し,1塩基認識能を誘起するi-PPCにHypを組み込むことにより,KRAS遺伝子のexon2codon12に見られる点突然変異とi-PPCの相補鎖形成挙動を解析,KRAS遺伝子変異をもつ各種すい臓がん細胞の細胞死誘導ならびに細胞死メカニズムについて解明する研究計画を立てている. 細目では下記の項目を計画しており,(項目1:Hypを側鎖に持つi-PPCの合成と物性評価)では,a)Hyp基の6位をベンジル基で保護したPNAモノマー(Fmoc-Hyp(OBn)-OH)の合成,b)マイクロウェーブ合成機を利用したFmoc-Hyp(OBn)-OHからのi-PPC(Hyp)の合成,c)細胞内輸送挙動の解析を目的とした蛍光ラベル化i-PPCの合成,d)KRAS遺伝子のexon2codon12に見られる点突然変異とi-PPCの相補鎖形成挙動の解析. (項目2:KRAS遺伝子を標的としたi-PPC(Hyp)による変異型細胞の網羅的な細胞死誘導とそのメカニズムの解析)では,a)蛍光ラベル化したi-PPC(Hyp)を用いた細胞内輸送挙動の評価,b)i-PPC(Hyp)による各種すい臓がん細胞の細胞死誘導,c)フローサイトメーターを利用した細胞死メカニズムの解明,を計画していた. 昨年度は項目1のa)-c), 今年度は項目1のd),項目2のa)が達成されたこととなるため,進捗状況は”(2) おおむね順調に進展している”と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
先の進捗状況について,下記の項目を達成したことを報告した. (項目1:Hypを側鎖に持つi-PPCの合成と物性評価)では,a)Hyp基の6位をベンジル基で保護したPNAモノマー(Fmoc-Hyp(OBn)-OH)の高収率合成法の確立,b)KRAS遺伝子のexon2codon12に見られる点突然変異とi-PPCの相補鎖形成挙動の解析,(項目2:KRAS遺伝子を標的としたi-PPC(Hyp)による変異型細胞の網羅的な細胞死誘導とそのメカニズムの解析)では,a)蛍光ラベル化したi-PPC(Hyp)を用いた細胞内輸送挙動の評価. 今後の推進方策としては,これまでの予定通り以下の項目を2021年度の進捗目標と設定した. (項目2:KRAS遺伝子を標的としたi-PPC(Hyp)による変異型細胞の網羅的な細胞死誘導とそのメカニズムの解析) b)i-PPC(Hyp)による各種すい臓がん細胞の細胞死誘導,c)フローサイトメーターを利用した細胞死メカニズムの解明. なお,2020年度の成果から,oligoPNA(Hyp)による5', 3'の認識能が低いことが示されたたため,今年度はγ位にジエチレンオキシドを配した新たなPNAモノマーの合成についても検討を行う予定とした.
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