2019 Fiscal Year Research-status Report
Control of Internal Structures of Polysaccharide Polyion Complexes and Their Transfer to Film Functions
Project/Area Number |
19K05588
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
橋詰 峰雄 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (40333330)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多糖 / ポリイオンコンプレックス / フィルム / 構造制御 / 成形加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多糖のポリイオンコンプレックス(PIC)からなるゲルのフィルムへの成形において、多糖PICの内部構造を制御し、さらにその構造をフィルムへと転写することを目指す。具体的には(1)PICゲルの内部構造制御に基づく力学的特性の向上、(2)成膜過程の改良によるPICの力学的特性のフィルムへの力学特性への転写、そして相補的な検討として(3)フィルムの後処理による力学的特性の向上、について系統的に検討を行う。成果を基に成膜機構を提案し、また天然多糖が合成高分子に匹敵する構造材料としての可能性をもつことを実証することを目標としている。 本年度は多糖としてはこれまでの研究で知見を蓄積してきたコンドロイチン硫酸CとキトサンのPICを中心とし、上記各項目を並行して進め、種々の処理が及ぼす影響を比較していくこととした。各項目における成果について、(1)については、フィルムに成膜する前のPICゲルの前処理として種々の塩水溶液による処理の効果について検討し、処理後のゲルの含水率や内部構造の変化、力学物性など、PICゲルの特性変化に及ぼす塩の効果がホフマイスター系列と関連づけて議論できる可能性が示唆された。またPICゲルの物性強化という点でセルロースナノファイバーを添加したPICからのフィルムの作製および物性評価について論文として発表した。(2)おいては、指定した荷重を供与できる油圧ロールプレス機を備品として購入し、PICゲルの加圧延伸によるフィルム作製について検討を開始することができた。当初の予想と異なり、必ずしもPICゲルの含水率が多ければ良く延伸されたフィルムになるとは限らないという新たな発見があった。(3)においては、市販の電気泳動装置を購入し、利用方法を工夫することで、あらかじめ作製したフィルムに対して浸潤状態で電場を印加するための実験系を新たに立ち上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記検討項目番号ごとに述べると、(1)についてはおおむね予想通りの進捗であった。(2)で油圧ロールプレス機を購入でき、加圧延伸によるフィルム作製について検討を開始できたこと、(3)で電気泳動装置を用いてフィルムに対する電圧印加の効果について検討を開始できたことは大きな前進といえる。ただし両方とも申請者にとっては新しい系の構築であり、基本となる実験条件について種々のパラメータの適切な値を見出していく所でやや多くの時間を費やしてしまうこととなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記検討項目ごとに述べると、(1)については、PICゲルの前処理により系統的にその物性を制御できる可能性が見出されたため、今後は本研究の根幹である、その物性変化をいかにフィルムの物性変化へと転写していくかについて、申請者らがこれまで検討を続けてきた熱プレス法、加熱延伸法によるフィルム作製において改めて条件検討を含め取り組んでいく。(2)おいては、加圧ロールプレスにおけるPICの含水率と成膜性に関する興味深い成果について更に詳細に調査し、成膜メカニズムへの理解へとつなげる。圧力とともにローラー回転速度の効果についても検証を進めていく。(3)においては、浸潤状態のフィルムに対する電場印加においては電圧印加の効果と電解液中によるフィルムの膨潤の効果と二つの効果があるため、その点に注意しながら検討を進める。直流ではPICの解離のみを誘起する可能性が高いため、交流電場の印加による評価にも着手する。いずれの項目についても、多糖の組み合わせを変えた場合についても検討を開始したい。PIC中での多糖間の相互作用が変わるため、種々の処理による応答性も変わることが期待され、PICゲルやフィルムの前処理、成膜過程におけるメカニズムのより詳細な理解へとつながるはずである。
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Causes of Carryover |
おおむね計画通り使用したが、年度末近くにおいては急な消耗品等の支出に備え余裕をもって運用していたため、結果として若干の残額が生じた。この残額は次年度試薬等の消耗品費として確実に使用する。
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