2020 Fiscal Year Research-status Report
可動性架橋型PEOネットワークの構築と高分子固体電解質材料への応用
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19K05599
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
宇野 貴浩 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50324546)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 可動性架橋 / PEOネットワーク / 環状PEO / チオール―エン反応 / 架橋密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に不溶性のゲルが生成することを見出した、ポリマー鎖中に多数のアリル基を有する市販の線状ポリエチレンオキシド (PEO) であるEO-PO-AGEとスペーサーを介してチオール基を有する環状PEO(c-PEO-SH)との組み合わせによる可動性架橋ネットワークの生成条件について検討した結果、アセトニトリル中でEO-PO-AGEとc-PEO-SHの混合物に超音波照射を行った後に、光ラジカル発生剤存在下でのUV照射によりチオール―エン反応を行った場合、溶媒に不溶なゲルが生成するのに対して、c-PEO-SHを添加しなかった場合、あるいはc-PEO-SHの代わりにチオール基を持たない環状PEOを添加した場合にはゲルが生成しないことが確認された。このことから、EO-PO-AGEとc-PEO-SHのゲル化が、単なるEO-PO-AGEのアリル基同士が反応した化学架橋の形成や、EO-PO-AGEと環状PEOとの間の物理架橋の形成によるものではなく、c-PEO-SHにEO-PO-AGEが糸通しした擬ロタキサンの形成とチオール―エン反応によるEO-PO-AGEへのc-PEO-SHの固定化を伴う可動性架橋の形成に基づくものであることが示唆された。 さらに、EO-PO-AGEとc-PEO-SHの混合比を変えて同様のゲル化を試みた結果、ゲルの収率および生成したゲルの膨潤度はEO-PO-AGEのアリル基に対するc-PEO-SHのチオール基の割合により大きく変化し、c-PEO-SHの添加量により可動性架橋ネットワークの生成効率や、ネットワーク中の架橋点の数、すなわち架橋密度の制御が可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①環状ポリエチレンオキシド(PEO)への線状PEOの糸通しに基づいた機械的な結合を有する可動性架橋型PEOネットワークの効率的な生成条件を明らかにする、②可動性架橋型PEOネットワークを用いた高分子固体電解質の優位性を明らかにする、ことを目的としとしている。これまでの検討により、多数のアリル基を有する線状PEO(EO-PO-AGE)とチオール基を有する環状PEO(c-PEO-SH)から可動性架橋型PEOネットワークを合成することが可能であり、c-PEO-Sの添加量を変えることでネットワークの生成効率と架橋密度の制御が可能であることを見出しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、低分子リチウム塩の存在下でEO-PO-AGEとc-PEO-SHを反応させることにより、可動性架橋型PEOネットワークを用いた高分子固体電解質を作成し、そのイオン導電率、電気化学的特性、熱的特性、機械的強度などの電解質材料特性を評価する。さらに、c-PEO-SHの代わりにチオール基を有する線状PEOを用いて、リチウム塩存在下でEO-PO-AGEとのチオール-エン反応させることにより化学架橋型PEOネットワーク電解質を作成し、可動性架橋型PEOネットワーク電解質と比較することにより、可動性架橋を用いた電解質の優位性を明らかにする。 最後に、リチウム塩の添加量やc-PEO-SHの添加量を変えた可動性架橋型PEOネットワーク電解質を作成、評価することを通じて、高いイオン導電率と充分な機械的強度の両立が可能なリチウム二次電池用の固体電解質として最適な組成を決定し、実用的な性能を有する全固体リチウムポリマー二次電池の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
研究成果の情報発信のために、国内学会(1年2回、高分子学会年次大会・高分子討論会)にて発表する計画を立て、国内旅費を計上していたが、高分子学会年次大会はオンライン開催となり、また、高分子討論会は大学の他の業務と日程が重複したため参加ができなかったため、旅費が不要となった。 次年度使用額は、物品費として使用する計画である。
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