2020 Fiscal Year Research-status Report
Precision design of novel functional polymer gels with organic/inorganic nanoparticle structure as crosslinked domains
Project/Area Number |
19K05602
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
伊田 翔平 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (80610740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲル / 両親媒性 / 刺激応答性 / リビングラジカル重合 / アクリルアミド / 架橋 / ハイブリッド材料 / モノマー配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高分子ゲルの高機能化に向けて、性質の異なる2種の成分を巧みに複合化したゲルの新たな設計指針を確立することを目指している。この目的達成のため、「有機高分子ミクロゲル構造を架橋ドメインとするゲルの設計」、「剛直な無機化合物を架橋剤に用いた末端架橋によるゲルの設計」の2項目について研究を行い、それぞれ以下の成果を得た。 1.有機高分子ミクロゲル構造を架橋ドメインとするゲルの設計:2019年度までに、温度応答性ミクロゲル構造を組み込んだヒドロゲルが、室温での温度変化に対して空気中でマクロな体積変化を起こすことなく力学特性を変化するという新奇な応答性を示すことを明らかにしている。また、重合誘起自己組織化法に基づく新たな合成手法を用いて物性の向上を達成している。2020年度はこの新たな合成法を用いて種々の組成を有するゲルを合成し、構造と力学特性の相関について多くの知見を得ることができた。また、別種の架橋ドメイン構造として、温度応答性の多分岐星型ポリマーを架橋構造とするゲルの合成も行い、従来のゲルよりも大幅に高い圧縮応力を実現するなど、特徴的な架橋構造に基づく特異的力学特性を示すことを明らかにした。 2.剛直な無機化合物を架橋剤に用いた末端架橋によるゲルの設計:両末端に反応性部位を有するテレケリックポリマーを精密合成し、無機架橋剤としてかご型シルセスキオキサンを用いた末端架橋によりゲルを得た。このゲルは熱処理に伴って不可逆的に力学特性を変化する新奇な応答挙動を示すことが2019年度までにわかっていた。2020年度は、この特異的応答挙動を発現する機構を解明するため、種々の組成や架橋剤分率を有するゲルを作り分け、物性に与える影響について評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(有機高分子ミクロゲル構造を架橋ドメインとするゲルの設計)新たに見出した重合誘起自己組織化法に基づくゲルの合成法に習熟し、種々の構造をもつゲルを作り分けることができるとともに、基礎的に重要な構造―物性相関を調査することができた。さらに、多分岐構造を架橋点に組み込んだ新たなゲルを得るとともに、当初予想していなかった程の強度を有するゲルを得ることができ、今後のゲル設計に向けて新たな知見を得られたことは大きな成果である。 (剛直な無機化合物を架橋剤に用いた末端架橋によるゲルの設計)前年度に見出した特異的物性変化の機構解明に取り組んできたものの、詳細なところはまだ推測の域を出ない。しかし、基礎的なデータの蓄積は行うことができているため、順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き、これまでに得られているゲルについて、より詳細に物性測定および構造解析を進めることにより、見出すことのできた新奇な応答性の発現機構に関する理解を進める。さらに、架橋ドメイン構造に種々の化合物を導入し、さらなる機能化を目指すとともに次の展開に向けた予備検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
理由:年度始めに予定していた通り、温度調整機能を有する紫外可視分光光度計の購入を行った。一方、新型コロナウイルスの影響に伴う研究室の一時閉鎖や学会の中止等により消耗品費・旅費・学会参加費が大幅に当初予定額を下回ることとなったため、次年度に予算を繰り越すこととなった。
使用計画:今年度も学会のオンライン化が多くなると予想されることから、消耗品を中心に研究費を使用する。
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