2020 Fiscal Year Research-status Report
耐熱・難燃性を備え柔軟なエアロゲル繊維の創出とエアロゲル化可能な高分子構造の解明
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19K05611
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
廣垣 和正 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (00512740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エアロゲル / 超臨界二酸化炭素 / アラミド / 多孔質 / 柔軟性 / 低密度 / 断熱性 / 湿式紡糸 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、計画したように、アラミド湿潤ゲルの超臨界乾燥条件の検討および、アラミドエアロゲルの構造評価を進めると共に、2021年度に実施を計画したアラミドエアロゲル繊維の紡糸法の検討および、エアロゲル繊維の物性評価を進めた。超臨界乾燥させる際、湿潤ゲルを十分量の溶媒に浸した状態からゲル内の溶媒を超臨界二酸化炭素へ置換した後、超臨界二酸化炭素を大気圧まで減圧して気体にする際、穏やかな密度変化となるようにすると、乾燥によるゲルの収縮を伴う細孔構造の破壊が抑制されることを見出した。パラ系アラミドのフィブリル分散液からゲル繊維を連続的に湿式紡糸する際、剪断速度を大きくすると分子会合を駆動力とするフィブリルネットワークの強化により、後の超臨界乾燥による溶媒除去時のネットワーク構造の保持に有利となり、緻密な多孔構造のエアロゲル繊維を作製できることを見出した。得られたエアロゲル繊維が空隙率90%を超え10~20 nmのピラーと10 nm程度細孔からなるフレキシブルな有機ナノ多孔体であることを明らかにし、空隙率の高い多孔体でありながら12 cN/dtexと産業資材用ポリエステル繊維の1.5-2倍程度の高強度を達成した。エアロゲル繊維の断熱性として、120 ℃のホットプレート上で繊維を1層(1本の繊維を重ならないように並べて面を形成:厚みca.100 μm)介すると氷の融解を抑えられ、180 ℃のホットプレート上に1層敷いた繊維を指で触っても火傷しないなど、高い断熱性を有することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、2021年度に実施を計画したアラミド湿潤ゲル繊維の超臨界乾燥条件の検討および、アラミドエアロゲルの構造評価を計画通りに実施できた。また、2022年度に計画していたアラミドエアロゲル繊維の紡糸法の検討を前倒して2021年度に進め、エアロゲル繊維の構造と紡糸条件の関係を明らかにできた。エアロゲル繊維の物性向上を妨げる紡糸時の問題点を整理し、2022年度に検討すべき課題を明確にできており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
パラ系アラミドのフィブリル分散液からゲル繊維を連続的に湿式紡糸する際、剪断速度を大きくすると緻密な微細構造のエアロゲル繊維が得られる一方で、紡糸の不安定性が誘発され繊維の形態不良による機械強度の低下が顕著になった。要因としてノズル内でのスリップフローによる剪断延伸の不均一性や、ノズルから凝固浴に押し出される際の抵抗、凝固浴での急激な固化が予想された。次年度は紡糸の安定化を進めて物性の向上を図る。並行して、アラミドエアロゲル(バルクゲル)および、エアロゲル繊維の更なる構造・物性評価を進める。構造と物性との関係から、求める物性を備えたエアロゲル繊維を作り出す構造の設計および、作製条件の指針を確立し、2020年度、2021年度に得られた知見と合わせて、分子構造の異なるアラミドのエアロゲル化機構を明らかにし、エアロゲルとなり得る高分子の構造・特性を提案する。
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Causes of Carryover |
次年度に計画するパラ系アラミドエアロゲル繊維の断熱性測定において多量の試料が必要なことが分かり、その作製にかかる費用として、海外開催の国際会議がコロナ禍でオンライン開催となり支出を予定していた旅費が必要なくなったため、その一部を次年度に繰り越すこととした。
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