2020 Fiscal Year Research-status Report
有機フラビン環の配列制御を基盤とする機能性超分子集合体の創製
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19K05617
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
飯田 拡基 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (30464150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フラビン / 超分子 / キラリティ / ゲル / 有機分子触媒 / 酸素酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
リボフラビン誘導体が自己集合により形成するオルガノゲルの構造やキラル光学特性、その応用について詳細に検討を行った。特に、有機溶媒中リボフラビン誘導体をメラミン誘導体と混合すると、水素結合により会合してキラルな超分子集合体を形成、ネットワーク状構造に成長したのち溶媒を取り込むことでゲル化することを見出した。得られたゲルのキラル光学特性を調べた結果、一方向巻きに片寄ったらせん構造のようなキラル超分子構造を形成していることが示唆された。その超分子キラリティを活用しキラル材料として応用できないか検討した結果、得られた超分子ゲルが特異的な不斉吸着能を発現することが明らかとなった。 また、有機分子触媒として働くフラビン化合物とヨウ素触媒を組み合わせた二成分触媒系の開発も行った。その結果、アミノピリジンとアセトフェノンの酸化的C-N結合形成反応により、生理活性物質の重要な骨格構造であるイミダゾ[1,2-a]ピリジンが簡便に合成できることを見出した。さらにインドールとアゾールの酸化的カップリング反応が進行することも明らかとした。これらはいずれも分子状酸素のみによって駆動し、排出される副生成物は無害な水のみとなる、低環境負荷型の有機合成手法である。また、これらの反応はいずれも以前報告したチオールを用いたC-S結合形成反応と同じ反応系中で進行させることができる。その結果、C-N, C-S結合形成反応がワンポットで進行する多成分連結反応の開発にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、リボフラビン誘導体とメラミン誘導体が水素結合により会合し、それらが集合して形成する超分子集合体の特性や構造、機能について詳細に検討を行った。その結果、リボフラビン誘導体とメラミン誘導体がゲル化剤として働き様々な超分子オルガノゲルが得られること、得られたゲルが不斉識別能を有するキラルソフトマテリアルとして利用できることを見出した。また、リボフラビン誘導体が発現する触媒機能について特に詳細に検討を進め、フラビン触媒とヨウ素触媒を組み合わせた二成分触媒が従来にない酸化的分子変換反応を進行させることを見出した。これらの検討を通じて、新しい環境調和型触媒反応の開発に成功したのみならず、リボフラビン誘導体の触媒機能について重要な知見が得られた。当初計画していた通り順調に成果があがっており、これらの知見に基づき今後より高度な研究成果に繋がることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、リボフラビン誘導体やリボフラビンーメラミン誘導体が形成した超分子ゲルを用い、光学分割材料やキラルセンシング材料への応用を進める。また、フラビン触媒を鍵とする多成分複合触媒とそれを用いた低環境負荷型触媒反応の開発を継続して遂行する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症の影響により、当初計画していたキラルゲルの応用を検討する計画の一部について変更が生じ、次年度に実施することとした。このため、生じた未使用額は次年度の実験経費に充てる。
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