2019 Fiscal Year Research-status Report
生体物質が切り拓くイオン液体研究のパラダイムシフト-高機能性食品へ-
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19K05622
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
北岡 賢 近畿大学, 工学部, 准教授 (50457602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
信岡 かおる 大分大学, 理工学部, 准教授 (10398258)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 生体物質 / 機能性食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カチオン、アニオンともに生体物質のみで構成されるイオン液体を開発する。当該年度は、イオン液体になりやすい生体物質の組み合わせのデータベース化に着手した。本項目では複数の生体物質を組み合わせて塩を形成する。作成した塩が液体化するかに注目し、正確な融点、粘度を評価する。初年度は、アニオンとして、GABAで構成されるGABA型イオン液体の合成に取り組んだ。組み合わせるカチオンとしては、非対称アンモニウム、コリン、アセチルコリン等を選択した。合成法としては中和法を採用した。この手法は副生成物が水のみでクリーンであり、既に予備実験で確立している。GABA型イオン液体の合成では、最初に、非対称アンモニウムとの組み合わせに取り組んだ。非対称アンモニウムは合成物であり、天然物質ではないが、液体化しやすい要因を明らかにするために採用した。その結果、[N2224][GABA]、[N4446][GABA]は室温で液体となることが明らかとなった。アルキル鎖長が長くても短くても、非対称構造であればイオン液体は液体化することが明らかとなった。また、イミダゾリウム型のカチオンと組み合わせた[C2mim][GABA]も室温で液体となることが明らかとなった。天然物質であるコリンと組み合わせた[Ch][GABA]は室温で固体となった。コリンはカチオンに水酸基が有るため、非対称アンモニウムであるが融点が高いと考えられる。また、水酸基をアセチル基で保護してあるアセチルコリンと組み合わせたイオン液体の合成を試みたが、アセチル基が加水分解され合成できなかった。原因として、イオン交換樹脂に強塩基を使用しているため、アセチル基が加水分解されたと考えられる。今後は、アセチル基が加水分解されないよう強塩基を用いない反応条件を探索する。また、コリン以外のカチオンとGABAを組み合わせたイオン液体の合成に着手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、イオン液体になりやすい生体物質の組み合わせのデータベース化として、最初にGABA型イオン液体の合成に着手した。液体になりやすいイオン液体の構造として、非対称アンモニウム構造が有用であることを明らかにした。非対称アンモニウムは生体物質ではないが、生体物質にも非対称構造を持つものが多く、生体物質のみからなるGABA型イオン液体において液体の物質を得る大きな手がかりを獲得した。また、残念ながら室温で固体となったものの、コリンと組み合わせた[Ch][GABA]を高純度に得ることができた。また、アセチルコリンと組み合わせたGABA型イオン液体の合成は、アセチル基が加水分解されるため、[Ch][GABA]が得られることがわかった。このようにこの合成法は強塩基性のイオン交換樹脂を用いているため、改良が必要であることがわかり、今後の指針がはっきりと分かった。今後、同じ手法をクエン酸やリンゴ酸などのアミノ酸型イオン液体合成にも応用可能であることから概ね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度までに、GABAのイオン液体化に展開した。今後は、それら知見を活かし、有機酸型イオン液体の合成に展開していきたいと考えている。有機酸としては、二酸であるリンゴ酸やフマル酸、三酸であるクエン酸型のイオン液体に展開し、有機酸のイオン化度がイオン液体の物性(融点、粘度)に及ぼす影響も明らかにしていきたい。また、GABA型イオン液体で問題になった、合成方法の改良に関しても同時に進行していきたいと考えている。強塩基性のアニオン交換樹脂を用いずに、GABAをカルボキシレートカリウム塩などの形にして、アセチルコリンアイオダイドなどと混合するイオン交換法を試す計画である。
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Causes of Carryover |
研究代表者に次年度使用額が生じた理由は、購入した薬用冷蔵ショーケースの価格と消耗品の価格が予想していたより安く購入できたためである。また、新型コロナウイルスによる影響により参加予定であった学会が中止になったためである。研究分担者に次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルスによる影響により参加予定であった国際会議が参加不可になったためである。これら繰越金の使用計画は、現在準備中の英語論文の投稿料として支出予定である。また、国内外の学会参加費、旅費として計画している。
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Research Products
(18 results)